大増税時代、そして公務員給与と社会保障費に大ナタ

人災・天災
New York Stock Exchange Crash, 1929




さて、せっかく当サイトで楽しいアニメの話ができたと思ったら、また嫌な話をしなければならない。当記事は、以下の記事の続編みたいなものである。

再び「預金封鎖」と「財産税」が近づいている
「アベノミクス」というカンフル剤の効果はやはり一時的と考えられる。昨年、中国株が暴落し始めたと思ったら、今年に入って世界的に株式市場が不安定化している。日銀は「マイナス金利」なるものを導入し、他方で国の借金は1千兆円をゆうに超えて記録更新中...

十数年前に破綻したアルゼンチンの場合、バンクホリデーが強行された。その際、政府は国民の外貨預金を没収(紙くず化した自国ペソと交換)した。

一方、日本がそこまで強行できるか否かは疑問だ。なぜなら、いかに「財政非常事態」だとしても、「新円切り替え」「預金封鎖」「財産税」等を敢行するには、新法の制定(つまり国会での議決)が不可欠であり、しかも政権にとっては確実に政治的自殺行為となるからだ。今の民主的な政権下だと、とても事がスムーズに運ぶとは思えない。

もっとも、大半の政治家には事態を収拾するだけの専門知識が乏しいのも事実であり、いざという時は、財務省の言いなりにならざるをえない可能性も十分ある。

New York, ‘Black Thursday’ (October 24, 1929): People gathering

 

the headline ‘Wall St. In Panic As Stocks Crash’, published on the day of the initial Wall Street Crash of ‘Black Thursday’, 24th October 1929.

私の予想では、預金封鎖はともかく、インフレをしばらく進めた後は「新円切り替え」「デノミ」くらいは実施されると思う。いったんタンス預金やアングラマネーもすべて炙り出す。その上で、たとえば新旧の交換比率を通して莫大な預貯金を徴収する仕組みだ。

ただ、以上の類いは、あくまでエキセントリックな策である。改革のメインとなるのは、やはり「当たり前の策」だ。

常識的な策・・・つまり「大増税」「歳出削減」である。



避けられない「大増税時代」の到来

まずは前者から。おそらく、所得税・法人税は政治的にも手をつけ難い。だから増税の矛先が向かうのは、主に消費税と間接税となる。2017年4月の消費税10%化は実施されるだろうが、その先に倍の20%になっても不思議ではない。間接税は従来品目の税率アップに手をつけるだけでなく、新たに「ギャンブル税」なども設置されるかもしれない。

また、「財産税」の施行も十分にありえる。というのも「フローではなくストックに税をかけろ」という声は以前から専門家の間でも根強い。しかも、大半の国民は傷が浅く、事実上の富裕層狙い撃ちだ。格差解消の名の下に政治的にも実行しやすい策である。似た意味で、「相続税」も強化されるに違いない。

ただし、今のグローバル経済時代にこれらの税を掛け過ぎると、対象者は自衛策として海外へ脱出するので、バランス感覚が必要になる。といっても、パナマ文書の問題化で、タックスヘイブンに規制の網がかけられ、国際課税の制度も立ち上がる予定だ。今までのように、節税目当ての逃避は通用しなくなる可能性も考えられる。つまり、かなり本格的な海外移住でないと税金対策にはならないかもしれない。

私個人としては、ぜひとも宗教法人税――フローとストックの両方――も設置してもらいたい。長らく抜け道だったため、ここに莫大な資産が蓄積されているからだ。

平行して、国民の資産把握のための、さらなる個人情報の一元管理化と、脱税に対する罰則が強化されるだろう。前者は「電子マネー・行政システムの普及」と一緒に進められる。

役人の皆さんは、いざ税を徴収する段になると、とてつもなく有能で、働き者に豹変する。われわれ市民には、抜け道も抵抗の方法もないと、覚悟したほうがいいと思う。

公務員給与と社会保障費には必ず大ナタが振るわれる

次に「歳出削減」策のほうを見てみよう。

財政規律の建て直しのためには、緊縮策は不可欠である。昨今のギリシアやスペインと同じで、「役人の人件費」と「社会保障費」には必ず手がつけられるだろう

つまり、決して公務員ばかりがいい思いをするわけではない。

下の表を見てほしい。国家公務員の数は57万人強で、人件費は約5兆1千億円だ。

出典:財務省

おそらく、リストラは法的にも組織運営上も難しいので、「総人件費の削減」策のほうがメインになる。つまり、年棒一律2~3割カットという形だ。

むろん、大借金を抱えているのは地方も同じだ。地方公務員の数は約231万人、人件費は約20兆円。この部分も歳出カットは免れない(*余談だが、私は常々、全公務員の中でも中央官僚の給与だけは特別扱いするべきだと思っている。少なくとも地方の役人とほぼ同水準なのはおかしい。国にとっての重要性は比較にならない。税金の無駄遣いは許せないが、一方でこういう「変な平等主義」もいただけない。重要性に応じて堂々と給与に差をつけるべきだと思う)。

また、人件費だけでなく、特別会計と公益法人、第三セクターなども当然、整理の対象になる。その他、国民感情対策(=ガス抜き)として、不動産・政府保有株などの国有財産の売却や議員歳費の削減なども、形ばかり行われるだろう。当然、われわれ市民サイドも、それまでの公共サービスの停滞や縮小は覚悟しなければならないと思う。

耳に挟んだ話では、もう「公務員給与一律3割減」「人員3割減」は、来たるべき対策としてすでに織り込まれているそうだ。それで「総人件費が半額」になるわけだ。

年金・医療費は半分に減額される可能性!

さて、年金・医療のほうは「崩壊」はしないが、大きなダメージを受けるだろう。

もちろん、現行の「社会保障と税の一体改革」は継続されるが、従来喧伝されてきた中身は全面的に差し替えられる。しょせん、現行の受給額は3~40兆円もの年度借金に支えられた“贅沢”でしかなく、「身の丈相応」に戻される際に「痛み」が伴うだろう。

下の表を見てほしい。もともと社会保障給付費は、税金とは別個に、それ自体の財源で運営されていた。健康保険や厚生年金などの名目で徴収される社会保険料がそれだ。

出典:財務省

ところが、90年代に入ってから給付額のほうはどんどん膨張していくのに対して、個人や企業が納める保険料の伸び率は低かった。そこで自己財源で賄いきれない分は国家予算(一般会計)から引っ張ってくる形になった。つまり、足りない分は税金や国債で補填するようになったのだ。

両者の乖離は年々ひどくなり、2014年度の統計だと、自己財源は約64兆円にすぎないのに対して、給付費の総額は約115兆円となっている。

つまり、公費(国庫・地方等)などの負担が約51兆円にまで膨らんでいるのだ。

結論から言うと、もっとも大胆なケースでは、この51兆円の歳出がざっくりとカットされ、「年金や医療は完全に自己財源で回しましょう」という形に戻されるだろう。

換言すれば、われわれが貰える年金・医療費などは「従来の約半分」に減らされる。当然、今現在、給付に依存している高齢者と病人は、大打撃を受けることになる。

ただし、これはあくまで最悪の場合だ。消費税の増税もあるので、公費負担はかなりカットされるものの、残されるだろう。第一、少子高齢化傾向の下で自己財源体制を続けていくと、給付額はどんどん細り、最終的には年金・医療制度が崩壊してしまう。

だから、最初だけ「半分カット」という思い切った改革が断行されるかもしれないが、すぐに毎年約一兆円の増加に合わせる形で、公費による補填が開始されると思われる。

ちなみに、年金や医療のように最初から自己財源を持たず、100%税負担の生活保護費は、相当減額されるものと覚悟したほうがいい。

以上の社会保障制度改革が断行されれば、直接的な打撃を受けるのは高齢者・病人・生活保護者である。おそらく、30、40代の健康な会社員にしてみれば、なんとかやりようはあるだろう。ただ、「明日は我が身」という言葉を忘れず、弱者をいたわってほしい。

というわけで、私たちは正義感と改革意欲に駆られ、私たち自身の政府と「見える富裕層」に怒りの矛先を向けることになるだろう。そういう計画らしいのだ。

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