なぜ共産中国は”打倒”されるのか? その知られざる根源的理由

中国・アジア




「アメリカの「打倒中国路線」は2006年から始まった」のつづき。

2000年に大統領に就任したプーチン&旧KGB軍団による猛烈な反撃があり、そこへさらに胡錦濤の中国が「反欧米」で合流したため、世界は冷戦バージョン2へと移行しました。しかも、今度はイデオロギー闘争色といえば「民主主義か、そうでないか」という程度で、むしろ大戦前の帝国主義間闘争に逆戻りした印象です。

しかし、この「民主主義か、そうでないか」が実は雌雄を決する問題なのです。



なぜロシアが狙われるのか?

興味深いのは、ロマノフ朝皇帝の独裁、スターリンの独裁、そして今またプーチンの独裁という風に、ロシアは常に専制的な統治によって、逆にユダヤ・プロテスタント連合地下政府の侵食を免れてきたという現実です。逆にいえば「民主化とは何か」ですね。

「影の政府」は、シュワーベン戦争でカトリック・神聖ローマ帝国から自治を勝ち取った後、スイスのバーゼルからライン川を下り、オランダの独立と、ついでイギリスのピューリタン革命を成し遂げました。共通しているのは「打倒専制政治」です。

オラニエ公ウィレム1世:ネーデルラント連邦共和国の事実上の初代君主 From Wikimedia Commons

なお、シュワーベン戦争は、その前の1490年代のルネサンスとスペインのレコンキスタ終了と繋がっていますが、それはまた今度に話したいと思います。

いずれにしても、彼らは常に“民主化”によって、国家を内側から掌握し、それによって自分たちが「影の権力者」として合法的に君臨できる仕組みを発見し、それを利用し、普及することによって、国境を超えて権勢を拡大してきました。

このことが分かると、近代フリーメイソンの本質も真に分かります。

で、彼らはロンドンを拠点とした後、次にフランス革命などの“民主化”を欧州大陸に仕掛けていったわけです。欧州の専制政治はこうして順番に打倒されていきました。で、最後に残った欧州の専制政治大国こそ、実は帝政ロシアだったんですね。

世界総民主化の果てにあるもの・・・

そういえば、「シオン長老のプロトコル」には、「おぬしらゴイムにとって本当は専制政治こそが救いじゃというのにやれやれ・・」というようなことが、さらりと記してありますね。なんでフクヤマの「歴史の終わり」が大絶賛されたのか、お分かりだと思います。

ただ、影の政府からすれば、あの本は結末だけが異なります。というのも、彼らのゴールは自分たちの特権の永続化ですから、全世界を民主化した後は、今度は一転して究極の専制政治へと向かうつもりです。実はここでユダヤとプロテスタントの信念上の温度差があるわけですが、すでにウインザー朝廃絶予定という形で決着がついているようです。

このことは追い追い触れていきます。

それはともかく、前回の続きです。「影の政府」にとって目下最大の障害が中ロであり、彼らの民族主義です。そして2006年、中ロを服従させるためには「世界大戦も辞さない」方針を打ち出しました・・・そういう話でしたね。

とくにユーラシア大陸の中心部「ハートランド」を制しない限り、いつまで経っても世界支配が完了しないので、彼らもロシアを服従させることに躍起になっている。

超国家勢力としては、また共産中国が民主化しない限り、この国の政治も経済も合法的に支配することができません。だから、彼らのゴールにとって大きな障害です。結局、中国は自ら民主化しなかったために、外から打倒されることになったわけです。

安倍さんは「価値観外交」と称して、個人の自由・民主主義・法治をアジアに定着させることを掲げていますが、彼はそれが正しいことだと信じきっています。大半の人がその価値観の正当性について疑いを持つことはありません。しかし、専制国家を打倒するためにその概念を生み出した側は、裏目的をずっと隠し続けてきたのが真実です。

2006年の段階で米の仮想敵国に公式認定された中国

以下、時系列として押さえておきたいと思います。

06年の戦略の大転換以降、真っ先に変更されたのが米の国防政策です。「アメリカにとっても日米同盟は生命線である」という記事で次のように触れました。

06年3月、ペンタゴンは新たなQDR(向こう4年間の国防計画)を発表し、中国がアメリカを攻撃する能力を持ったことを安全保障上の脅威ととらえ、対抗策を講じるべきだとした。中国の軍事力増強が毎年二桁を維持し、イランやベネズエラ、キューバなどの反米国家とも連携している事実も、アメリカを警戒させる要因となっている。

その翌月にワシントンで行われた米中首脳会談では、胡錦濤国家主席が信じがたいほど屈辱的な扱いを受けた。中国側の再三の要請にもかかわらず、アメリカ側は公式晩餐会で胡主席をもてなさなかった。胡主席の演説中には、記者団に紛れ込んでいた法輪功の信者がずっと喚き散らし、それが中国を除く全世界に実況放送された。胡主席は大中国の指導者としてふさわしい扱いを受けられず、完全に全世界の前で「面子を潰された」のである。

(略)西半球の覇権国たるアメリカの基本戦略は「オフショア・バランシング」、つまり他の地域から勃興してくる挑戦者をそのつど叩くことだ。日本帝国・ナチスドイツ、ソ連、そして今は中国である。

このように、中国は2006年に公式に米の「仮想敵国」に認定されたんですね。

この流れが今でもずっと続いています。

南シナ海における「世界大戦の発火点作り」を手助けした野中広務

それからしばらくして、日本でも、日中関係というか、対中政策の大きな転換点となる事件が起こりました。私は「チェンバレン外交の轍を踏んだ民主党政権と野中広務氏ら」という記事で、以下のように触れました。

第一に、2010年9月の「尖閣諸島中国漁船衝突事件」だ。中国軍が関与している民間漁船が尖閣諸島の領海を侵犯し、海上保安庁の巡視船に体当たりをかました事件だ。(略)

第二に、2012年9月の「官製反日暴動事件」だ。この直前に中国人活動家による領海侵犯・尖閣諸島上陸事件があり、これに対して当時石原都知事が都有地にする動きを見せると、野田政権は同諸島を民間から購入して国有化する閣議決定をした。これに猛反発した中国側は国民を焚き付け、空前の反日暴動を使嗾した。(略)

この二度目の事件の後、野中広務が中国国営テレビに登場し、「中国の皆さんに大変申し訳ない」などと“心からお詫び”したのはご承知の通り。

私はこれを見て「後々大変な禍根を残すことになる」と直感し、2012年9月29日の投稿でこう警告した。

“(前略)自己陶酔的な善意が、どれだけはた迷惑か、アジア全体に悪影響を及ぼすのか、野中氏には想像できないのだ。たとえば、同時進行の南沙諸島の問題はどうなるのか。強盗にお墨付きを与えたことで、中国はさらに周辺諸国に対して横暴に振舞うだろう。(略)彼の行為は、結果的に悪を利し、同胞を危険にさらし、アジア地域での紛争を激化させるものだ。”

続いて、加藤紘一氏や河野洋平氏も訪中し、政治家として現地邦人の受けた大損害に対する抗議や補償要求をするどころか、日中友好を“確認”して帰って来た。私はやはり同じ記事で「これは確実に中国側の増長と軽侮を招くだろう」と警告した。

私が恐れていた通りに事態は進行しました。

当時、日本側は何ら実効性のある報復措置を取らなかった。当然、当事者がそうである以上、基本的に第三者の米国も強く出るはずがない。

そして、中国はこの日米の姿勢を確認してから、今度は軍事的にも経済的にもより重要な南シナ海で攻勢へと転じたわけです。

現在の自民党安倍政権は、実質的に2013年スタート(*総選挙は12年末)ですが、民主党時代のあまりの対中宥和政策が影響した面もあると思います。

ちなみに、中国が南シナ海の浅瀬を埋め立て始めたのが2013年5月頃。アメリカは丸2年間、見てみぬふりをしました。内心、笑いが止まらなかったでしょう。中国が増長するのを見て一番喜んだのは、「これで戦争の口実を得られる」と思った影の政府です。

野中氏もまさか自分が戦争屋に協力してしまったとは思いもよらないでしょう。

そして世界大戦の火種が準備され、欧米が対中強硬姿勢へと転じた

さて、「今度の戦争はヒロシマ・ナガサキから始まる」で列挙しましたが、こんな風にして2013年から14年にかけて、ほぼ同時に各地で世界大戦の発火点が出現しました。

そしてこの頃から、とくにシリアを舞台にして、ロシアを戦争へと引きずり込もうとする動きが活発化します。ヒラリーはともかく、オバマまでがそれまでの平和の仮面をかなぐり捨てた感じでした。一方、それまで10%近い高い経済成長を遂げてきた中国市場で散々うまい汁を吸ってきた欧米の金融資本勢力が、この頃から離脱を始めました。時を同じくして、欧米が対中強硬姿勢へと転じます。ここからは時系列でまとめます。

ちなみに、この辺りは、「影の政府に望まれて誕生した対中強硬派のトランプ大統領」という記事が参考になると思います。

・2015年4月、CFR(外交問題評議会)が対中国政策を180度転換するレポートを発表した。すると、それまで親中だったオバマも態度を豹変した。

・2015年5月、米の国防総省が記者会見し、中国が南シナ海の浅瀬を埋め立てて軍事基地化を進めている事態を世界に向けて“暴いた”。

・2015年6月のG7サミットで、中ロ非難声明が採択された。

・2015年9月、習近平主席が国賓待遇で訪米したが、アメリカ市民とメディアの関心は同時期に訪米した「ローマ法王」へと向かい、米中首脳会談は無視された(中国側は時期をずらすように頼んでいたので、これは米の当て付けの可能性もある)。

・2015年10月、空母「ロナルド・レーガン」が横須賀基地へ着任。そこを拠点として、南シナ海の人工島の領海内(12カイリ=約22km内)で“巡視活動”を行う「航行の自由作戦」を開始した。

・2015年12月、BBC NEWSが南シナ海問題を大々的に報じた。

同年はざっとこんな具合です。この部分だけを見ると、まるでアメリカが急に中国敵視政策へと転換したかのような印象を受けますが、前述のように、基本的には2006年から仮想敵国扱いです。ただ、金融資本が直前まで寄生していたんですね。

また、2016年の前半は、周知のように、アメリカは欧州でのテロ問題と、北朝鮮の核・ミサイル問題にかかりきりでした。さらに大統領選挙で外交は半ば機能停止です。

・2016年6月、フランス国防相がEU各国に対し、南シナ海の公海に海軍艦艇を派遣し、定期的に航行するよう呼びかけた。

・2016年7月、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、国連海洋法条約に基づいて、南シナ海に関する中国の領有権主張を退ける判決を下した。

これで、西側としては、G7の反中声明に「法的正当性」を得た格好です。

・2016年12月、英軍が南シナ海問題に関わる決定を下した。

そして、今年2017年になりました。

2017年、中国を締め上げるための米政権が誕生した

1月、ドナルド・トランプが新大統領に就任しました。大統領だけでなく、政権の理念面の支柱ともいえるバノン首席戦略官も対中強硬派と言われています。

ちょうどこの頃、ペンタゴンは南シナ海での「航行の自由」作戦等に参加させるため、空母「カール・ビンソン」を東アジアに派遣しました。対して、中国は今や南シナ海の軍事基地に戦闘機・爆撃機・各種ミサイルなどを配備済みです。

果たして、現場の中国軍人たちは、これまでのように指をくわえて、敵巨艦が悠然と眼前を航行する様を眺めているだけでしょうか。中央軍事委員会からは「絶対にこちらから手を出すな」という厳命が行き届いているらしいですが、米中機の海南島空中衝突事件のように、現場レベルで挑発行為や衝突が発生する可能性は常にあります。

そういえば、CIAのマイケル・モレル前副長官は「中国と米国は近いうちに戦争になるだろう」と述べています。19世紀の英独対立のように、「急速に勃興する挑戦者」が現れると、それまでの覇権国との間で戦争になる可能性は、歴史的にも高い。

一方、経済面では、トランプ政権は対中強硬派のピーター・ナヴァロを「国家通商会議」委員長に指名しました。引っ掛かったのは、本を読んだトランプのほうからナヴァロ氏に声をかけたということ。誰かが読ませたわけでしょう。つまり、はじめから対中方針はすでに固まっていて、その適任者を選んだ、ということです。

以上、「流れ」として掴むことが重要だと申し上げましたが、これまでの経緯を精査してみると、トランプ政権は一見新しい対中方針を打ち出したようでいて、実際にはそれまでの流れに乗り、むしろその勢いを加速させたというのが実態に近いですね。

最後の小修正が裏目に出るかも・・・

ところで、気になるのは、「トランプ政権の対中ロ外交はキッシンジャー戦略の修正再起用だ」でも述べたように、2017年の新政権から微妙に従来の方針を軌道修正したらしい点です。具体的には「中ロをまとめて処分する」方向性から、「中ロを分断した上で各個撃破」に切り替えたように思われます。

つまり、対ロ宥和策は、トランプとしては本音かもしれませんが、背後の「影の政府」的には、先に中国の体制を打倒するまでの猶予にすぎない。対して、ヒラリー派は「先にロシアを殺ってしまうべき」であり、この路線対立が先の米大統領選における隠れた争点だった気がします。

トランプ政権の対外政策を裏で仕切る大戦略家キッシンジャーは、どうやら冷戦時代の対中ロ政策をリバースした上で、今に用いるらしい。

この小修正が吉と出るか、凶と出るか、まだ分かりません。ただ、私の予感はどうもコレなんですよね・・・。

本当は恐ろしいプーチンの「トランプ当選歓迎」の理由
みなさん、こんにちは。 どうも、世間で言われていることは真実と全然違うのではないか、という気がしてきた。 すでに、トランプの米大統領当選は反グローバリズム派の勝利だ、これからは彼が先頭に立ってグローバリストに反抗していくに違いない・・・とい

つまり、西側が最終的に敗北するということ。実はそれを予感しているから、「影の政府」も割れて、ヒラリー派も狂ったように暴れているのかもしれない・・・。

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