さて、前回の記事で日本獣医師会のサイトを紹介したが、総会や理事会の資料を幾つか当たっていくうち、門外漢の私にも何となく問題の構造が見えてきた。
下の文書は、平成20年(2008年)度の第65回総会の資料である。当時の山根会長の発言だ(*赤線は筆者。その他の資料も同)。
読んでの通り、会としても、この時点で、獣医師の地域遍在と分野別の遍在(産業獣医の不足)が生じている現実は承知していた。しかも、会長いわく、教育体制が不十分で結果的にそうなったという。ならば、元愛媛県知事の加戸氏の言った「東高西低」問題を、獣医師会としても認めている格好になりはしないだろうか。
しかも、その西日本において唯一、四国にだけ獣医の養成学部が存在しないわけだから、ますます「四国での新設」が妥当性を帯びてくる格好になる。
私は「四国に新設すること自体は公益に叶っている」と当サイトで主張してきたので、それが日本獣医師会の会長自身の言葉から裏付けられたのは、よろこばしい。
むろん、「なら加計学園でいいのか」と言われると、これも以前の記事で述べたが、かなり微妙なものがある。私から見ても、彼らがビジネスをしているようにしか見えないので、疑問がないわけではない。ただ、もともと四国内ではこの学校しか新設に挙手していないそうだから、その問いかけは、無いものねだりに等しいとも言える。
文科省と日本獣医師会はタッグを組んで業界の問題に取り組んでいた
いずれにしても、その年の12月、これらの問題に対処するため、文科省内で、獣医学教育の改善・充実を目的とした調査研究協力者会議が立ち上げられた。
*(中略)の字は筆者入れ。
上にあるように、山根会長も出席して“指導”していたらしい。規制当局と規制される側の関係がこれでいいのだろうか、という疑問はさておき、いずれにしてもこの時点から文科省と日本獣医師会が一緒になって対策を考えていたようだ。
と言っても、両者は、学部の新設はではなく、既存学部の定員を水増しする「対症療法」の道を選んだ又続けた。先の国会証言に立った青山繁晴氏によると、本来930名の定員なのに「1200名まで水増し入学が行われて」いるそうだ。この点を問いただされた前川氏は、青山氏の示した事実関係自体は一切否定しなかったので、どうやら事実らしい。
すると、「既存の獣医学部は、本来定員通りに運営して、新たに獣医過疎地域に学部を新設したほうが、学生と地域の双方にとってメリットがあるのでは?」という疑問が誰でも思い浮かぶ。とくに学生の教育環境は、優先的に配慮すべきではないだろうか。
そして前川氏らは「自分たちが進めてきた行政が妨害された」と思った
つまり、既得権益を守る前提で両者が“対策”していたように思えるが、その対策を始めてから丸4年が過ぎところで、あるエポックな出来事が起きる。
自民党が政権に返り咲き、実質2013年年頭に安倍政権が発足したのである。
どうも一年くらいしてから、政権は獣医学部の新設へと舵を切り始めたらしい。
とくに2014年度に両者は非常に激しいつばぜり合いを演じるようなるが、その経緯に関しては別途記事にする。しかも、石破茂に、例の「裏で新設阻止の4条件をコソコソ作成」とは別個の、ある重大な疑惑があることに、私は気づいた(次回へ)。
いずれにしても、前川氏ら文科省・日本獣医師会側にしてみれば、「プロの私たちがずっと以前からこの問題に取り組んできたのに、安倍政権が突然、縄張りに割り込んできた」というふうに映る。正しいか否かはともかく、彼らの主観ではそうなる。
おそらく、それを指して「行政が歪められた」と言っているのではないか。だが、その“行政”とは、日本全体というより、一業界の私利私益を守るためのものではないか。
今回調べていて気づいたのは、日本獣医師会の政界への影響力だ。
以下は平成25年(2013年)の同会の資料。
(http://nichiju.lin.gr.jp/conference/rijikai/20131210.pdf)
なんと、同会の「会長を激励する会」なるものに、衆参116名もの国会議員が集まっている。どれだけ日本獣医師会に政治力があるか、という話である。
だから、前川氏は、北村直人・麻生太郎・石破茂などの有力政治家をはじめとする「ケモノ族議員軍団」の後ろ盾があると算段して、安心して反逆に踏み切ったわけだ。
この問題はどうも「正 VS 不正」の単純対立構造ではないぞ、私が気づいたのは、どうやら正しかったようだ。
おまけ・日本獣医師会の第71回通常総会(平成26年6月27日)の資料から
玉木雄一郎議員のご挨拶(*赤線は筆者)
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