今の北朝鮮の核攻撃能力を甘く見るな

オピニオン・提言系




つい先日、ワシントンで開催された「核安保サミット」では、北朝鮮の脅威を受けて、安倍総理とオバマ大統領と朴大統領が会談し、日米韓の連携強化で一致した。だが、米韓はともかく、日本はこの種の冷戦時代さながらの対北戦略のままでよいのだろうか。

これは以前、北朝鮮のスパイを監視していた公安マンから聴いた話である。彼によると、全国の在日米軍基地は常時、工作員の監視下にあるという。たとえば、空軍基地相手なら、どの機体が何時何分に着陸して、逆にどの機体が離陸した、という動態をずっと観察し、本国に送信している。こうして彼らは在日米軍の軍事力の状況をリアルタイムで把握しているのだ。要は、北朝鮮はそれくらい米軍の動向に神経を尖らせている。

また、これは別の人物から聞いた話だが、実際にはノドンミサイルは正確に着弾するという。なぜなら、実戦になると、現場の工作員が電波発信機を設置して誘導するからである。「軍事専門家が『北のミサイルは性能が低くて命中率が悪い』などと言っているが、あれは知ったかぶりの嘘だ」そうだ。だから、長距離弾道ミサイルはともかく、少なくとも対日本用の中距離タイプは正確に標的に命中すると考えたほうがいい。

この、ほぼ日本全土に届く射程1300キロのノドンミサイルは、現在、数百発が実戦配備されている。移動式発射台を装備し、いつでもどこからでも発射可能という。

以上の基礎がある上での、近年の急激な核兵器開発の進展であることを理解する必要がある。現在は核弾頭の小型化にも成功し、十数個ほど保有している可能性が高い。

このように、北朝鮮の陸海空軍はまったくのボロ軍隊でも、核ミサイルと特殊部隊だけは奇形的に発達している。そして米軍の介入を非常に恐れている。それゆえ第二次朝鮮戦争が勃発したら、北朝鮮軍がこの切り札を使わないはずがない。その際、韓国軍に対する後方支援をかく乱するために大規模対日テロ攻撃に打って出るだけでなく、在日米軍と自衛隊の基地を直接攻撃するだろう。これは軍事作戦としては当たり前の話である。

なにしろ金正恩と取り巻きにしてみれば、自分が生きるか死ぬかという問題だ。切り札を温存したまま死ぬことはありえない。そして、自分が死ぬ時にはできるだけ多くの敵を道連れにしようと考えるだろう。たとえば、日米の後方支援の拠点となる厚木基地を核攻撃する可能性は十分に考えられる。「神奈川県には在日同胞がたくさん住んでいる」とか、いちいちそんなことを気にする朝鮮人民軍幹部はいない。当然、日本の公安当局に情報漏洩する危険性があるから、内々に総連幹部に事前警告する可能性もありえない。

では、このような脅威にどう対処したらよいのだろうか。

「だから日米韓の連携を強化しなければならない」というのが従来の常識だったが、このような戦略に固執していたら、よもや核攻撃で虐殺されかねない状況になってきた。

われわれを取り巻く国際情勢は、あたかも水の流れのごとく常に変化する。国の生死が掛っている安全保障戦略は、常に最新の現実を反映したものであるべきだ。

私は「もう朝鮮半島有事に関わるな」と声を大にしたい。つまり、「日米韓の連携からの離脱」であり「局外中立」という、戦略の180度転換である。

2016年04月04日 「アゴラ」掲載

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