「ゆりかごから墓場まで」監視される超管理社会が到来する

政治・社会
理化学研究所のスパコン「京」




「ゆりかごから墓場まで」(from the cradle to the grave)といえば、第二次大戦後にイギリスの労働党が掲げた「理想の福祉社会」を表すスローガンでした。

以来、先進的で手厚い社会福祉を指す概念として広く用いられてきました。

しかし、あと数年もしたら「異常な管理社会」の例えとして用いられると予想します。当然、それは「ユートピア」というより「ディストピア」です。

前回の「ソフトバンクがモンスター企業になる日」で触れた内容は、まだまだ始りにすぎません。本当に恐ろしい管理社会はその後にやって来ます。

ソフトバンクがモンスター企業になる日
グループの中核子会社であるソフトバンクが株式上場し、2兆6千億円もの資金を市場から調達したとして、トップニュース扱いになっています。 報道によると、他方でグループは16兆6千億円もの有利子負債を抱えており、来年にも続くFRBの金利引き上げに...



役所系の身分証明書が続々と電子化されてスマホ対応可能になる

前回はソフトバンクが電子決済という形で従来の銀行やクレカの口座の役割を取り込んでしまったらこんなに便利になりますよ、って話でしたね(棒)。

今、政府は超デジタル社会「ソサエティ5.0」を目指していて、その理念は日立の中西宏明会長発ということになっていますが、本当はどこかの若手のエリートから吹き込まれたものでしょう。政府はデジタルファースト法案などで行政の仕事や手続きを一挙に電子的手法に改革しようとしています。当然、書類はできるだけなくし、押印・対面などのやり方も見直す。ICチップ付きのマイナンバーカードは今後、健康保険証や戸籍の代わりとしても利用できるようになります。承知の通り、戸籍は各自治体が管理していて、本籍地から離れている人は郵送で取り寄せる必要があり、物凄く不便でした。どうやら今後、自治体の連携システムを作ることで、データベースの統合化を図るようです。

で、マイナンバーの電子証明等はスマホのSIMカードに移植可能になる。これが何を意味しているか、分かりますよね? 今後、役所が発行している身分証明書などが電子化して、どんどんスマホ(やPC)のほうに入り込んでくる、ということです。

そのスマホは住民票やパスポートなど「電子身分証」も兼ね、また決済履歴だけでなくGPSを通して常に動態まで管理されるので、もはやジョージ・オーウェルの『1984年』ばりの超監視社会の実現である。

私は2年半前にこう書きました。

では、役所系の身分証明書といえば、どんなものがあるのか。

まず、戸籍や住民票。そして社会番号(マイナンバー)

これはマイナンバーカードと同じ自治省・各自治体の管轄。

次は、運転免許証(警察庁)と健康保険証(厚生労働省)でしょうか。

運転免許証は約6千万人が利用しているそうです。

あと数年以内に、新規取得又更新の際に「両手の平のスキャン」が始まると、今のうちに予言しておきます。顔写真も「全身3D」撮影、もしくは「動画撮影」になる。

電子健康保険証には、電子カルテ(病歴・受診・治療歴)も付随するでしょう。

ま、今まで医療機関内の患者データの融通がなかったのが異常なんですね。これで医者も治療しやすくなり、患者も初診の際にアンケートを書かされる必要がなくなる。

社会保障のもう一つの柱は年金です。

電子化すれば、日本年金機構はスパコンで足るので、何万人いるのか知りませんが、みんなリストラでしょう。納付証明や請求も書類ではなくメールで来るようになる。

あとパスポート(外務省)。

国際社会との調整が必要なので、これが一番後回しになる可能性があります。

身近なものでいえば、自治体の発行する図書館カードなども融合するでしょう。

財務省のエリート以外は氷河期時代が来る税務関係者

さて、話の出発点は「スマホが電子マネーの財布になる」というものでした。

だから、忘れてはならないのが納税(財務省)です。

納税に関わる役所・人員は社会にとって「巨大な必要悪」であり、富の生産・流通とは何の関わりもありません。そういう意味で警察と同じです。仮にこの世から犯罪者がいなくなれば警察を大幅に縮小することができるように、納税がスパコン上で計算・納付できるようになれば、従来のシステムは大幅にリストラ可能です。税務署員はもっぱらマネー以外の物的ストックを対象にして仕事するようになるかもしれません。

完全電子マネー社会に移行すれば、政府・自治体が納税のアルゴリズムさえ決めれば、あとは財務省のスパコンが勝手に人々の収入・支出の履歴を調べて、引き落としまでやってくれるでしょう。消費に際して片っ端から「経費」のタグを付けようが、それが本当に経費なのかまでAIが判断するようになるかもしれません。

いずれにせよ、この納税とそれにまつわる膨大な事務作業・専門人員の類いという、経済にとって物凄く無駄な部分を、大幅にリストラできるようになるかもしれない。

ま、財務省のエリートだけが安泰で、あとは容赦なく斬り捨てられるわけです。

ここまで書いていて、「なんだ、超管理社会が到来するとか恐怖を煽りながら、なんか便利になるような話ばかりじゃないか」と思う人がいるかもしれない。

なにしろ、書いている私自身もそう錯覚するくらいです。

たしかに、電子化により、お役所系の業務は大幅な効率化になり、それにつき合わされてきた私たちも、その分だけ時間や労力を無駄にしなくてもすむ。

しかし、重要なことは、上に挙げた役所系の公的身分証などは、電子化されることによってデジタルデータとなり、私たちの端末と紐付けされる、という点です。

そして、今後、私たちはその端末を使って、普通に消費するようになるわけです。

行き着く先は「全国民・全人類管理システム」

いつ(When)、どこで(Where)、誰から(Who)、何(What)を、買ったか。

いつ、どこで、どんな種類の交通機関を利用したか。

電子決済システムはそれらを履歴化して、管理者サイドのサーバーに送信するわけですから、見る人が見ればプライバシーもへったくれもないわけです。

現状、スマホを使わなくても、おそらくスイカ・パスモなどの交通系ICカードを利用している人は、かなりその種の個人情報を丸裸にされていると思います。

ただ、私に言わせれば、その程度なら、まだかわいいもんだ。

その端末の通信やプロバイダーを担っている企業――まさにソフトバンクのことだが――なら、電子口座を取り込んだことで、その主がどこに勤めていて、どれだけ給料を貰っているかまで分かる。収入まで分かれば、お金の出入りはすべて把握したも同じ。

当然、サイトの検索履歴、閲覧履歴、メール履歴も分かる。もしかすると、電話での会話の内容まで分かるようになるかもしれない。その人がフェイスブック、ツイッター、ライン、インスタグラムなども利用していたら、無数の画像や友人知人などの人間関係までが分かる。発言内容や政治信条、宗教などから、「精神面」さえ、かなり明らかになる。

そして、端末はGPSを装備している。私も地図アプリは頻繁に利用する。しかし、端末自身の発信電波と合わせて、居場所が常に特定されていることでもある。

つまり、仮に公共交通機関を利用しなくても、私的な自家用車でも、バイクでも、自転車でも、歩いていても、スマホをもつ限り、トラッキングされている。

だから、単に消費履歴を把握されるとか、そういうレベルの話ではありません。

端末(スマホ)と、ネットワークと、それらを束ねている中央サーバーにより、全人格・全行動を追跡され、記録されるようになると称しても過言ではありません。

今の仕事、経済状態、消費傾向、学歴・経歴、普段閲覧しているサイト、読んでいる本、メールやツイッターの内容、付き合っている仲間、出かけている場所・・それらのデータを活用すれば、AIは「あなたがどんな人間か」まで一瞬にして弾き出すでしょう。

中国では「人間ポイント制」が始まっていますが、あれはまだ初歩の段階。

統治する側がそれを活用しないと考えるなら、よほどナイーブな人間です。「全国民管理システム」否「全人類管理システム」が作られないと、誰が言えるでしょうか。

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