アゴラ砲に殺された民進党

政治・社会




民進党は今現在、哀れなプラナリアのように四つの勢力に分裂して生き長らえている。

今回の選挙結果が一連のプロセスの区切りだとしたら、「始まり」は何だったのだろうか。私はまさに八幡和郎氏による次の記事だったのではないかと思っている。

「蓮舫にまさかの二重国籍疑惑」(2016年08月29日)

少しその頃の経緯を振り返ると、2016年3月、民主党と維新の党が合流して「民進党」となり、旧民主党代表の岡田克也氏が初代代表に就任した。しかし、その後、参院選や都知事選で敗北が続き、責任論に押される形で岡田氏は辞任を表明。

8月5日、蓮舫氏が民進党代表選への立候補を正式に表明した。

蓮舫氏の人気独走ぶりに対して、8月11日、八幡和郎氏が「台湾から帰化した蓮舫が首相になれる条件」という最初の蓮舫記事を書かれた。

八幡氏はすでにこの時点で蓮舫氏の国籍問題に感づいておられたが、はっきり二重国籍でないという確認が取れないことから、改めて上の8月29日の記事になった。

これが蓮舫氏の民進党代表選挙立候補の「四日前」というタイミングだった。

このテーマに池田信夫氏もすぐに参戦したのはご承知の通り。

野党第一党の代表ならば選挙結果次第で首相になることも十分ありえるわけで、常識的に考えても二重国籍は望ましくない。現に日台は尖閣諸島で衝突を抱えている。

また、法律上も、重国籍者は一定期限までにいずれかの国籍を選択すること(国籍法第14条第1項)、選択宣言後は当該外国国籍の離脱に努めること(国籍法16条第1項)などが定められている。台湾人には中国法は適用されず、後者の努力義務のあることは、法務省と当時金田法務大臣からも正式見解として出された。

どうやらこの件に関して蓮舫氏は無頓着(?)だったらしいが、いずれにしても彼女は9月15日の党選挙により、民進党の第2代代表に選出された。

野党第一党の女性代表の誕生は土井たか子以来30年ぶりで、民進党もその清新さに党勢の回復を賭けたわけだが、このように蓮舫新体制は、八幡・池田両氏から直前に爆弾をプレゼントされてスタートする格好になってしまった。



クローズアップされた二重国籍問題が最後までおさまらず

蓮舫新代表は安倍政権を声高にあげつらうばかりで、何らの現実的対案も示さないことに対して人々の苛立ちが次第に募った。しかし、これはそれまでの野党党首に共通した態度であり、別に彼女に始まったことではない。蓮舫氏が大きく人心を失ったのは、ただ批判だけするという姿勢(しかもブーメランばかり)に人々がうんざりしただけでなく、明らかに自身の国籍問題をめぐる彼女の対応のまずさにもあった。

はっきり言えば、ただ単に事実を明らかにするという、それだけのことが彼女にはできなかった。明らかな嘘を重ねた。また、ネット民によって過去の事実が次々に掘り起こされ、拡散されていった。こうして次々と自爆・誘爆を引き起こしていった。

今にして思えば、八幡和郎氏が成型した「実弾」は、蓮舫氏の政治的な火薬庫に命中したようだ。誠実な対応によってのみ消火可能だったのに、彼女を露骨に援護射撃した朝日毎日や左派系知識人の尻馬に乗ってか、同じ様に批判を排外主義や差別主義へとすり替えてしまった。だが、「赤いパスポートになるのが嫌だった」という本音を持つ人が、なんで日本の国会議員になろうと思ったのか、なってどう国家に奉仕する意志だったのか、誰であろうと疑問に思うのは、素朴な庶民感情として当然のことだ。

興味深いことに、上のような現象は、これまで新聞・週刊誌やワイドショーなどのメディアが火付け役だった。ネットメディアから放たれた「実弾」がここまで政局を揺るがした例は、国内史上はじめてのケースかもしれない。

これはまた、ネットを通して大衆に広まった「野火」が、朝日毎日といった既存メディアの権威と力をもってしても消火不能だったことを意味している。

力関係の逆転とまでは言わないが、大衆による情報の拡大再生産がメディアの大衆操作力を打ち破った例として、ある種の歴史的な転換点だったのは間違いない。

おそらく、蓮舫氏が一議員だったら、どれだけ疑惑を嘘で糊塗したところで、彼女一人の問題に留まっていただろう。だが、民進党にとって不幸なことに、彼女は党の「顔」だった。だから蓮舫氏の信用失墜と期を一にして民進党人気も凋落していった。党の左傾化も重なり、党内保守派の離脱を機に離党ドミノが始まった。

こうして、2017年7月、蓮舫氏は一年を待たず代表辞任へと追い込まれた。そして、前原氏が後を継いだときには、もう民進党は半分「死んで」いた。

ここまで急激に民進党が衰退して離散を余儀なくされたのも、元はと言えば、八幡和郎氏が放った一発の「銃弾」がきっかけだったのかもしれない。

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