1年前の第1回米朝首脳会談を振り返ってみる

外交・安全保障




みなさん、こんにちわ。

2019年6月12日(水)で、

シンガポールでの第1回米朝首脳会談から、いよいよ1年になる。

北朝鮮のほうはすでにこんな談話を発表しています。

北「我々の忍耐にも限界」…共同声明ほごも示唆 6/5() 読売新聞オンライン

【ソウル=豊浦潤一】北朝鮮外務省報道官は4日、昨年6月12日にシンガポールで行われた初の米朝首脳会談から1年になるのを前に談話を発表し、「米国が対(北)朝鮮敵視政策に執着し続けるなら、共同声明の運命は約束できない」と述べた。「我々の忍耐にも限界がある」とし、「米国は一日も早く我々の要求に応える方が良い」と主張した。

どうやら、2017年発動の、輸出収入9割減の「9・11制裁」がよほど効いているらしい。亡命した北朝鮮幹部によると、2年しか持たないそう。

ただし、コソ泥みたく「瀬取り」などで密貿易し、韓国も支援してきたので、もう少し寿命があるはず。よって、私的には「今年末」が北朝鮮のリミットだと思う。

思えば、私は第1回会談の約1か月前にこんな記事を書いていた。

自分で読み返してみて頷く部分もあったので、この記事の中の「追い込まれた北朝鮮の生存戦略を推察する」という部分を、抜き取って再掲したいと思います。

北朝鮮は最初から「完全非核化」なんかする気はない
みなさん、こんにちは。 最新の情勢では、やはり北朝鮮が「一方的に核放棄できるか」などと言い始めた。 先んず、米韓軍事演習を理由に南北閣僚級会談を中止し、そして朝鮮中央通信はキム・ケグァン第1外務次官の談話を伝えた。 それによると、 「トラン...

あくまで私の推測と断っておきますが、どうも米の軍事行動が避けられないと確信した北朝鮮・金正恩政権は、次のような方針で動いているのではないかと思います。

第一に、味方を作り、国際社会を分断する。

これによって対北政策をめぐって互いに論争させるわけです。まず平昌五輪を利用して、平和とか同じ民族というムードを演出して、うまく韓国を取り込みました。

また、韓国だけでなく、とくに日本の場合だと、例によってメディアや知識人などを使い、北朝鮮の擁護・代弁をさせます。敵の内部にいる味方を使って、世論操作をするわけです。その他、対中政策も大転換しました。あえて習近平に臣従する真似をして、味方につけました。(略)

第二に、米朝首脳会談にむけて、事前段階で相手を自分のペースに引き込み、妥協させる。

トランプ政権は「リビア方式」と呼ばれる一挙非核化を突きつけていますが、これを「段階的非核化」へと変え、条件闘争に持ち込みたい。そして、一段階ごとに経済制裁解除や経済支援、米朝国交による体制保証などを得る。

つい最近「一方的な核放棄なんかできるか、米朝首脳会談をご破算にする可能性もある」と臭わせ始めたのも、こういう算段からだと思います。先に三人の米国人を解放して宥和ムードを高め、相手の「会談成功への期待値」を高めた上で、それを人質にとる戦術をやっています。それを突然ご破算にすると脅して交渉の主導権を握り、できるだけ有利な条件で合意に持ち込む算段です。

第三に、一応「合意」にこぎつければ、今度は実際の査察段階でまた寝技に持ち込む。

米が求めているのは「いつ・どんな場所・誰でも」自由に査察できる「無条件査察権」です。しかし、一致した見方は、かつてのリビアや南アフリカとは比べ物にならない前代未聞の規模になる点です。それくらい査察対象が膨大にある。その際に、妨害と受け取られない境界線上の行為を通して、査察官を疲弊させ、できるだけ査察を遅滞させる。(略)

第四に、結末としてAとBのシナリオを用意する。

Aのほうは北朝鮮が望むシナリオ。

できるだけ時間を稼ぎ、トランプ政権の崩壊や中東戦争の勃発などの国際情勢の急変を待ち、相手が対北軍事行動をしている余裕がなくなったのを見て取るや、以前のようにちゃぶ台を引っくり返す。「本当は核放棄するつもりだったが、米韓のせいで、できなくなった」と、人のせいにしてご破算にするわけです。

Bのほうは望まないシナリオ。

いわば北朝鮮にとって、最大限犠牲を払う最悪のシナリオです。それは一定の核物質や核弾頭を差し出し、部品や核施設の廃棄にも応じて、「これが全部だ」と騙すことです。つまり「一部非核化」を「完全非核化」と誤認させる。実際にはかなりの核物質や核弾頭を極秘の施設に隠匿する。北朝鮮は世界でもっとも秘密の軍事施設を持つ国の一つですから、おそらく隠匿可能と踏んでいる。関係者には家族を人質にして口止めをしておく。

 

というわけで、北朝鮮は今、上のような方針で動いていると推測します。

つまり、馬鹿正直に全部核放棄するつもりなんか毛頭ない、最悪のケースでもなんとか一部の核放棄に留める腹積もりだ、というのが私の推測です。

6月12日の米朝首脳会談は、表面的には成功するかもしれない。

ショーアップされた舞台で歴史的な合意が成立するかもしれない。

だから何だ、と言っておきます。北朝鮮は、これまでも契約して、あとから翻す、というパターンを続けてきた。書面や条約にサインしても、後から平気で破る。彼らにとって今度の米朝合意もその程度のものに過ぎない。本質は詐欺国家です。

とりあえず核放棄の約束だけはして、日米の市民と国際社会を信用させる。しかし、完全非核化なんかする気はまったくない。とことん人を騙せると信じている。

なぜなら、それが彼らの今までの成功体験だから。

それゆえ、合意が成立しただけで、「日本は経済支援しろ」「植民地支配の清算をしろ」などの、手先系のメディアや知識人の大合唱には、耳を貸しては成りません。

いかがでしょうか。

いやはや、改めて読み返してみて、「おれはこんないいことを言っていたのか」(笑)。

上の「第三」ですが、結局は核査察段階まで行きませんでしたね。

非核化の口約束はしておいて、結局は「核査察」すら拒んでおり、その段階には行っていないからです。古い核施設の爆破とか、くだらないアフォーマンスをしただけ。

まあ、今まではそれで騙されてきたわけですが・・・。人の「人を信頼したい」という善意にとことんつけ込んで強請りタカる・・・それがあの連中のいつもの手口です。

というわけで、「北朝鮮は最初から完全非核化なんかする気はない」というのはその通りでしたね。会談の頃、たしかアンケートで日本人の7割が「信用しない」と応えていたと思いますが、普通の日本人は正しく本質を見抜いていたということです。

また、会談に直前にこんな記事も書いていました。

米朝首脳会談が北朝鮮の“土下座セレモニー”な訳
さて、本日6月12日、シンガポールでいよいよ米朝首脳会談が行われる。 このサイトでは日付しか表示されないが、記事のアップは朝9時に行った。 つまり、当記事は、首脳会談が行われる直前にアップしたものだ。 アメリカと西側諸国はあくまで北朝鮮に「...

この記事もかなり本質を突いていたのではないかと思います。

やはりトランプ政権のほうが最初から一枚上手。

まあ、さすがにダブルでは貼りませんので、読まれる方はリンク先で。



今年はいよいよ事態が動く!?

さて、北朝鮮は今年一杯程度しか持たない。

他方、アメリカが共産中国を明確に「異形の敵」と定めて、経済面・人権面・軍事面・台湾問題などの全方位から締め上げに掛かり始めた。

その方針を受けて、日本の、あのNHKまでが、ウイグルでの人権弾圧や、天安門事件などを熱心に報じました。先日のスペシャルでは天安門事件を正確に描写していた。

中国で倒産ラッシュが始まったという情報がある。

ところで、このタイミングで、アメリカは米軍をペルシア湾に派遣した。空母艦隊や爆撃機だけでなく、海兵隊と補給部隊も動員しようとしている。

どうもこれは相手の先制攻撃を口実として開戦する意志の表れではないか。

いよいよ、今年の秋から冬にかけて、事態が大きく動きそう。

私は中東で戦争が起きたら、それが極東に連鎖すると、ここで書いています。

しかも、1950年代の朝鮮戦争のように中朝が連携して動くだろう。

史上初、習近平と金正恩が反米で結束する!【新中朝反米同盟・前半】

史上初、習近平と金正恩が反米で結束する!【新中朝反米同盟・後半】

習近平の中国はアメリカとの対決の意志を固めつつある。分かり易い連中で、テレビから反日ドラマが減り、朝鮮戦争をテーマとした反米ドラマが流されているとか。

北朝鮮の陸海空軍はボロ軍隊ですが、ミサイル戦力と特殊部隊だけは別

去年から北朝鮮が弾道ミサイル実験はしていないというが、ある程度の性能が確かめられたら、あとは実戦配備するだけで、元から試射をやり続ける必要はないわけです。

中距離弾道ミサイルまではほぼ実戦配備段階にある。

つまり、日本やグアムまでなら核攻撃できる

しかし、米本土までは、ミサイルを安定的に飛ばせない。

アメリカ的には依然としてまだ戦争の「機」なわけです。

追記

[ソウル 11日 ロイター] – 北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は11日、米国が北朝鮮に対する「敵視政策を撤回」しなければ、1年前のシンガポールでの歴史的首脳会談の合意が「白紙になる」と警告した。

白紙になったところで、アメリカは何も困らない。

むしろ、北朝鮮から白紙にしたことで、「北朝鮮が合意を破った」と言えることになる。

最初からこれを待っていたのかも?

「馬鹿につける薬はない」といいますが、どうやら北朝鮮につける薬もないようだ。

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