下は2003年3月の「アメリカ―イラク戦争」の開戦時の様子である。首都バクダッドが米軍よって激しい空爆を受けている。
来年か、再来年には、ピョンヤンでこのような光景が展開されていてもおかしくはない。
当時のフセイン政権は、まず「安保理決議に違反した」として国際社会から槍玉に挙げられた。その後、中ロが反対するなか、米国は決議無しでの攻撃を敢行した。開戦事由として、大量破壊兵器の所持や、圧政からの市民の解放という大義名分が掲げられた。
現在、対北朝鮮でも確実に同様のプロセスが始まっている。このような大義名分はそっくりそのまま対北朝鮮でも再利用可能だ。しかも、同じ民族の韓国が攻撃支持を表明したとあっては、もはや反対するほうが政治的に立つ瀬を保てないだろう。
イラク戦争を強力に使嗾したイスラエル(ロビー)も背後で暗躍している。その理由は、北朝鮮が中東の反シオニズム国家と事実上の同盟関係にあり、核・ミサイル技術の開発供給源を担っているからだ。イスラエルは小さな国のため、核ミサイルを落されれば一瞬にして滅びかねない。北朝鮮はイランやシリアに対して、武器製品と技術の輸出を行っている。ユダヤ系の戦略家たちは「仮想敵国への核ミサイルの拡散を防ぐためには、まず源泉の北朝鮮から処断する必要がある」と気づいた。
ただし、その処断計画は日本の支援を前提としているため、日本が「離韓」したら実行不可能になる。離韓しようとした安倍総理が狂ったように海外メディアから攻撃された理由の一つが、実はこの絡みである。
昨年の「イラン核合意」、つい先日の米とキューバとの和解、そして現在進行中の北朝鮮包囲網の形成・・・実はすべて繋がっている。米国は二正面作戦をしたくない。だから反米国家を連携させず、分断して、各個撃破する戦略でいる。キューバは取り込み、のちに非戦争オプションで政権を交代させる。イランは、当面の時間稼ぎをして、あとで潰す予定だ。つまり、各個撃破戦略の最初の標的が「北朝鮮」なのである。大きな視点でいうと、これはさらに大きな戦争――対ロシア戦に向けた「露払い」(雑魚潰し)でもある。
そういう意味で、実はもう戦争に向けた動きが始まっていると思われる。
アメリカの軍事作戦は自国(とイスラエル)の安全を優先した身勝手なものだ。最初の空爆で、北朝鮮の核関連施設と長距離ミサイル関連施設を破壊し、先んず米本土への脅威を除去するつもりだ。当然、サダム・フセインに対する時のように、ステルス爆撃機等による先制攻撃によって、金正恩と側近を排除しようとするだろう。
しかし、最初の一撃で仕留め損なったら、どうなるのか。実は、私はこのことを心配している。100%の確率で仕留められる保証など、どこにもないのだ。現に、米軍は、対イラク戦の時も、サダム・フセインを取り逃がしている。以後、大量破壊兵器を持たないフセインはトンズラするだけだったが、金正恩はどうするだろうか。
彼は怒り狂って大量破壊兵器の使用を命じるだろう。むろん、日韓に向けて。
すでに、3月7日の米韓合同軍事演習の開始後、朝鮮中央通信や労働新聞は「核による先制攻撃」を警告している。声明に拠ると、「われわれの攻撃手段の射程圏に入っている」のは、米韓だけでなく「日本にある侵略の本拠地」も含まれているのである。
2016年04月12日「アゴラ」掲載
(付記:繰り返しますが、アメリカがキューバとの和解に踏み切ったのは、むしろ戦争にむけた準備の一環というのが私の見方です)
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