さて、後半。
前半で述べたように、私は「オズワルド犯人説」が最初から脇道だと知っていたので、以前の真相追究記事では、ほとんど無視しました。
しかし、映画『JFK』では、まず「犯人」とされたオズワルドの正体に迫っている。
結論から言うと、オズワルドはずっとCIAと軍部の指示で動いていた末端のエージェントでした。そして、最後には「おとり」として生贄にされた。
オズワルドの経歴がいかに怪しいか。そして、いかにして「犯人」としてでっち上げられたか。映画『JFK』はこの虚構性を暴くことに前半の重点を置いている。
この過程で、オズワルドと一緒に行動していた現場の実働部隊の実態が生々しく暴かれていきます。彼らはCIAの下請けとしてカストロ体制打倒のためにキューバ人傭兵を訓練していたグループと被っていました。日本風にいえば反共の極右・ヤクザ勢力に近い。
どちらかと言うと“左派”のオリバー・ストーンが一番嫌悪を感じる人種らしく、ホモだらけの異常者の集まりであるかのように描写されています(笑)。
その「いかがわしい」連中を統率していた一人が、FBIの元シカゴ支局長で、当時、私立探偵・CIAエージェントのガイ・バニスターでした。彼のニューオリンズの事務所にはオズワルドや、ギャリソンが実働部隊の一人と睨んだデヴィット・フェリー、そして反カストロのキューバ人グループなどが頻繁に出入りしていました。
ただし、彼らもチェスで言うポーン(Pawn)でしかなく、ガイ・バニスターは“心臓発作”で死に、デヴィット・フェリーは“自殺”します。
そのガイ・バニスターが「目上」として接していた人物として、クレイ・ショーというCIAマンもいました。彼についてはすぐ下で触れますが、デヴィット・フェリーを右腕として従え、オズワルドの面倒も見ていました。
ところで、この「FBI」と「シカゴ」で、以前の記事で触れた点と繋がります。
ジョン・コールマン博士によると、ケネディ暗殺作戦の元締めは、MI6の元北米局長サー・ウィリアム・スティーブンソンでした。彼はCIAの生みの親でもあります。
スティーブンソン卿が補佐役としたのがFBIのブルームフィールドでした。
現場責任者だったのはブルームフィールドであり、彼がニューオリンズのFBIオフィスから作戦を指揮していたというのがコールマン博士の見解です。
映画『JFK』ではそのFBIオフィスが一瞬ですが登場しました。
しかも、映画では、ブルームフィールドらしき初老の男が少しだけ登場して、目撃女性を脅す場面が描写されています(本人とは違うかもしれません)。
このすぐそばにはCIAの事務所もありました。
で、暗殺を実行したのはシカゴマフィアのサム・ジアンカーナの手下です。FBIのシカゴ支局長をしていたガイ・バニスターと知らぬ仲ではありません。ジャック・ルビーもマフィアの一員で、麻薬取引などでキューバ人グループと関係がありました。
すると、暗殺の直接的な命令系統は「スティーブンソン卿→ブルームフィールド→CIAかFBIのニューオリンズ支局長→ガイ・バニスター→ジアンカーナ」かもしれない。
ちなみに、ジアンカーナもまたFBIの張り込みの中で何者かに殺されるんですね。マフィアのボスでさえ口封じの対象になる・・それがこの事件の恐ろしさです。
オリバー・ストーン監督の結論への疑問
さて、ジム・ギャリソン検事は最終的にクレイ・ショーに突破口を求めます。
クレイ・ショーは、CIAが運営する何十という秘密工作のためのダミー会社の一つを経営し、中南米との貿易を行っていたビジネスマンです。本編終了後の字幕で出て来ますが、1974年に亡くなった後、CIAマンだったことが明らかになります。
残念ですが、映画を見ていても、クレイ・ショーは、オズワルドやデヴィット・フェリーと一緒に行動していて、同じホモ仲間だったという程度のことしか見えてきません。
おそらく、クレイ・ショーは、マフィアの狙撃犯をサポートし、オズワルドを犯人に仕立て上げるといった現場工作レベルの一員でしかなかったようです。
彼もまた、暗殺の命令がどこから来たのか、何が暗殺の動機なのか、「大きな絵」は決して知らされることのないレベルの人物だったと思われます。
決定は明らかにもっと上のレベルで成されているんですね。
たとえば、ケネディが首を切ったダレスCIA長官の下で副長官をつとめていたのがチャールズ・カベルで、その兄弟がダラス市長のアール・カベルでした。
ウォレン委員会を影で仕切っていたのはOSSの幹部だったジョン・マクロイで、彼は完全に支配層系の人間でした。当のアレン・ダレスも委員会のメンバーでした。
もうこのクラスで明らかに暗殺の実行と隠蔽が行われているんですね。
その中途半端感を補うためか、オリバー・ストーン監督は、紳士風の匿名の「大物」を登場させて、饒舌に裏話をさせています。
紳士は、黒幕の一人Y将軍の直属の部下で、マングース作戦の実行者と名乗る。
この謎の軍情報将校が、ワシントンに来たギャリソンの前にふいに現れて、ケネディ暗殺が少なくともダレスのレベルから降りてきていることを臭わせる。
はっきり言えば、ここがオリバー・ストーンの描く事件の「真相」部分になっている。
劇場公開当時は頷いていましたが、今見たら「これはどうか・・」と首を傾げました。
監督は、映画の最初に、有名なアイゼンハワーの「軍産複合体警告演説」を持って来ている。それは伏線なわけです。私ももう3回か4回くらいサイトで紹介している(笑)。
(Dwight Eisenhower on The Military Industrial Complex)
その上で、この黒幕の場面で、軍とCIAの上層部が結託して、秘密のサークルを作って、ケネディの暗殺の陰謀を開始したという結論に持っていこうとしている。
決定的な責任者はいない。みんな軍産複合体の利益代表者であり、それゆえ共犯関係という見方です。監督は暗殺の数日後にジョンソンがベトナム撤退の命令を覆した陰謀の場面をここで挟み込みます。そして長引いたベトナム戦争によりどれほど軍需産業が潤ったかをえんえんと例示する。だからケネディの撤退決断は死活問題だったのだと。
私個人は、これはストーン監督の間違いだと思っています。
なぜなら、動機も犯人も違っているからです。それはおそらく二番目の理由で、一番目はやはり「Executive Order 11110」でしょう。
それに軍とCIAの上層部もまた「雇われている側」です。軍もCIAも巨大な官僚組織であり、上層部が支配層の一員か否かは、また別の次元の話です。
無理もありません。ジョンソンやニクソンなどの大統領クラスでさえ「影の政府」の操り人形でしかないなんて、普通の人間には想像もつかない。
いや、もしかすると、オリバー・ストーンはすべてを知っていて、その上で、人々を誤った結論へと導こうとしているのかもしれません。
だとすると、彼もまた高度な情報操作サークルの一員ということになりますが・・。
ケネディもギャリソンも敗れたが、後に続く者がきっと出て来るだろう
さて、映画『JFK』ですが、最後に法廷対決を持ってきています。
ジム・ギャリソン検事は、末端のクレイ・ショーを法廷に引きずり出します。
「クレイ・ショー裁判」はケネディ大統領暗殺をテーマとして争われた唯一の公式裁判です。1969年1月29日に始まり、3月1日に結審しました。
ギャリソンは、オズワルドが囮に過ぎないことや、ケネディが本当はどんなふうに殺されたかなどを、法廷で力説します。しかし、原告側敗訴で終わりました。
そこで映画も終わりますが、裁判の持つ意味は大きかったと思います。
ジョン・F・ケネディも言いました。「誰かが最初の一歩を踏まねばならない」と。映画では描かれていませんが、その後のギャリソン検事はどちらかと言うと不遇でした。マスコミと連邦政府から苛め抜かれ、離婚と貧乏暮らしを余儀なくされます。
他方で、弟のロバート・ケネディも、キング牧師も「やつら」に暗殺されました。自分たちの特権利権を脅かす者は容赦なく消す・・それが世界支配層のやり方です。
こうして、根本的なところが狂ったまま、今日まで至っています。
日本だって事情は似たようなものです。世界支配層の下請けをしている売国奴は金・地位・名誉をほしいままにして、長生きする。対して、正義と真実のほうを選択し、抵抗した者は、政治的に暗殺されるか、もしくは若くして死ぬよう仕向けられる。
たしかに、ケネディやギャリソンは、戦って敗れたのかもしれません。しかし、彼らが我が身を犠牲にして突破口を印したことが無駄だったとは思いません。
彼らの抵抗の記録は、後の人々を永遠に奮い立たせるでしょう。
そして、正義と真実の火を絶やさないため、後に続く者が現れるでしょう。その抵抗が積もり積もれば、いつか狂った世界も正されるのではないでしょうか。
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