日本の電力はどう改革すればいいのか? 答えは8年前に出ていた

オピニオン・提言系
Takaaki Yamada




みなさん、こんにちわ。

私は約8年前、アゴラに載せた「電力改革は失敗に終わる」という記事の中で、ほぼ結論として次のように述べました。

(これからの)日本は送電・変電・配電設備の増強に突き進んでいく。

政府で改革を牽引している人たちは、それが“イノベーション”であり、経済活性化のために不可欠なインフラだと信じているから、イケイケどんどんである。

ところが、今、急激に進歩しているのはエネルギーの個産個消技術なのだ。それを促しているのが市場の力なので、これは誰にも止められない時代の流れだ。

つまり、テクノロジーは「これからは送電線を減らしていけ」と訴えているのである。

だが、これからの日本は「時代とまったく逆行する道」を突き進もうとしている。

今後、電力インフラは肥大化していくが、一方でそれに頼らないプライベート電力も徐々に増えていく。遅くとも両者の経済性は十年以内にクロスオーバーする。

以後は、みんなでインフラを支える今の構図から、自家発を所有できない個人や企業だけが支える構図へと、少しずつ変化していくだろう。

これは将来、エネルギーを軸とした格差が社会に芽生える可能性を意味している。

例えるなら、飾り付けが増えて神輿は年々重くなるのに、担ぎ手は逆に減っていくようなものだ。

自家発電気の高額売電制度が続くならば、抜けた担ぎ手が神輿側に乗るに等しい。

当然、「抜けたもの勝ち」になるが、事がエネルギーだと抜けるに抜けられない人たちもいる。かくて電気を「生む」側と「生めない」側の格差は拡大し、後者は「エネルギー弱者」と呼ばれるだろう。

とくに家庭のあまりの光熱費格差が不公平感を助長し、政治問題に発展すると思われる。この頃ともなると、「かつての電力改革は失敗だった。自分たちは時代の流れを読み違えた」と言われるようになるだろう。

いくら発電や小売を自由競争にしようが、電力インフラが全体として「電力を独占するシステム」であることには変わりない。エネルギーの個産個消テクノロジーが洗練されていくにつれ、その旧来の構造そのものが根底から覆るのだ。

この巨大な地殻変動を勘案せずに電力改革が論じられ、進められようとしている。

ようやくこういう時代が到来したかなと思います。



改革の道を間違えて、にっちもさっちも行かなくなった日本

3・11後、識者からツイッター民までが「発送電分離」を唱えていたことをご記憶でしょうか。誰もが突如「発送電分離主義者」になった感すらありました。

有力な発信源の一つが、孫正義・飯田哲也氏の「自然エネルギー財団」系でした。

いわく、

送電網は発電と分離して、連系・増強をすすめ、「巨大な公共の電気のプール」にする。一方で、FITによって誰もが自然エネによる発電事業に参入できるようにし、太陽光や風力などによる電力をそのプールにどんどんぶち込んでいく・・・。

一見すごい構想であったため、人々が従来の電力システムに疑念を抱いていた3・11後の日本にあって、無数の人々が「新時代の指針」であると感じたようです。

しかも、当時、ドイツなどの欧州が先行していたから、なおさらです。

発送電分離に関しては、(池田信夫氏のような?)市場資本主義・新自由主義経済的な立場の人たちも賛成しており、反対の声は私も寡聞にして知りません。

しかし・・・。私は当時、

発送電分離なんかたいした意味はない。

FITによる自然エネルギーの普及は間違っている。

そういう方向での電力改革は失敗する。

ということを平気で書いて発表したため、一部の人たちから敵視されました。

ただし、私は「持続可能なものほど真に経済的である」との信念から、徹底した自然エネルギー派ですが、あくまで合理性と戦略に基づく普及を是とするものでした。

というわけで、FIT大賛成のサヨク的な自然エネ派からは「原発推進派! 自然エネルギーの普及を潰すやつ」などと指弾され、逆に「アゴラ」によくいた原発守れ派・反自然エネ派からは「原発に反対する浅はかな自然エネ派!」として指弾されました。

今から見てみると、電力改革は当初、世論の後押しもあって、孫・飯田氏の方向性に向かいましたが、電力会社の寝技的な抵抗と、途中から「これはまずい」と気づいた経済産業省の官僚による軌道修正が入り、中途半端な「生煮え」で止まった格好です。

日本の答えはすでに8年前に出ていた

しかし、電気料金のほうは世帯あたり月に千円くらいはちゃっかり上昇し(この間、化石燃料代の指標である原油価格が急落したのに)、電力における再生可能エネの比率も、もともとあった10%(ほとんど水力)から18%へと、少し増えた程度の成果でした。

で、今また世界的な反地球温暖化キャンペーンにより、日本はCO2と石炭火力の削減を求められています。

しかし、日本は異常にコスパの悪い政策をやったばかり。

やはり原発を再稼動するしかないのか? しかし、仮にそうしたとしても、新設が止まった以上、結局は原発もどんどん引退していく他ない。

それとも、世界がなんと言おうが、石炭火力発電を守り続けるのか。

あるいは、またしても「自然エネルギー財団」系の構想を再浮上させるのか?

それとも原発稼動のみならず、新設方針へと踏み切るのか?

マスコミも「問題だ」と煽るが、その「正解」となると、言わないし、言えない。

識者も「答え」を示せない。

どうすればいいか、誰も分からない。誰も「新たな方針」を示せない。

ただ「日本は詰んだ」という思いだけが募っていく。

しかし、私は日本がこういう矛盾に陥ることを早くから予測していた。

そして、日本が取るべき正しい道筋をすでに示していた。

それがこれです。

「真の電力改革と自然エネルギー普及策――FITとは異なる日本オリジナル方式の提案(前半)」

「真の電力改革と自然エネルギー普及策――FITとは異なる日本オリジナル方式の提案(後半)」

現状の矛盾を打破する方針は唯一これしかない。

電力の個産個消(地産地消)をすすめるべし。

田舎から電力自立を促し、とにかく送電・変電・配電設備を減らせ。

三大都市圏には、眼前の海にある洋上風力と海流による電力を入れろ。

などなど。

私はとっくの昔に正解を言っている。

ちなみに、孫・飯田氏系は、アジア全体を覆う巨大な送電網「アジアスーパーグリッド構想」を唱えているが、私はこれも100%失敗に終わると断言している。

ソフトバンクは各国と協力して計画を進めているが、こんなものは絶対に粗大ゴミになると。なぜなら、イノベーションは送電を減らすことを示しているからです。

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