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第二次朝鮮戦争が起きる構造――トランプ政権と軍産複合体の利害の一致

湾岸戦争の時の一幕 出典:The Atlantic Operation Desert Storm at the First Gulf War

空母「カール・ビンソン」がどこをどう動いたとか、北朝鮮がどこへ向けてどんなミサイルを発射したとか、そういった表面の情報を追うこともいいですが、やはり「戦争はなぜ起きるのか」という「構造」を見極めることが一番重要だと思います。

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「対話」や「平和的解決の道」が極度に困難な理由

4月29日、ローマ法王フランシスコは、記者団の質問に答える形で、北朝鮮情勢について「事態が熱くなり過ぎている」と懸念し、「米朝双方」に対して「自制」と「外交手段での問題解決」を訴えかけました。また、「ノルウェーのような第三国」が調停役をやったらどうかとも提案し、国連の役割にも期待を示しました。

極東情勢に疎いヨーロッパの第三者は困ったものです。ローマ法王は北朝鮮の周辺諸国が1994年からこの問題に取り組んできた事実をご存じないのでしょう。

そもそも、今までが外交で解決しようとしてきたプロセスでした。それでうまくいかないから、今日の緊迫した状態になった。ティラーソン氏もそういう意味で「北朝鮮を非核化しようとする20年間の努力は失敗に終わった」と総括した。

こんな時は、閣僚の誰かが「バチカンとISの双方が互いに歩み寄って話し合うべき」と、揶揄の一つでも放ったらどうなのか。バチカンが「向こうはローマを征服してローマ法王を殺すとまで宣言しているテロ組織だ」と怒ったら、「こっちもそういうことです」と肩をすくめればいい。そうしたら、自分たちが愚かな口出しをしたことに気づくだろう。こういう高等な“失言”はできないんですね、日本の政治家さんは。

それはそうと、アメリカと国際社会は、そうやって外交的努力を重ねてきて、今まで二度も北朝鮮から騙された。経済制裁も中ロが骨抜きにするので効果がなかった。やはり中ロなどの大陸勢力にしてみれば、シーパワーに対する緩衝地帯として北朝鮮を取っておきたいし、日米に対する鉄砲玉の役目も負わせたい思惑がある。

一方の金正恩としても、西側に妥協して核開発を放棄したカダフィの末路は他人事ではない。うっかり西側を信用したばかりに、リビアは“民主化”を扇動され、結局は攻め込まれ、空爆された。カダフィの無残な最期を見た金正恩は「絶対に核兵器を放棄するものか」と堅く誓ったに違いない。しかも、リビアとカダフィの前には、同様にイラクとサダム・フセインの事例もあった。だから、金正恩はアメリカの甘言を信じないし、核・ミサイルの所持を放棄すれば己の死に直結すると理解しているはずだ。

それゆえ、アメリカと北朝鮮の「対話による解決」は、非常に望み薄です。

もはや「どっちもどっち」の北朝鮮とアメリカ

北朝鮮は、核実験を停止することで当面の危機を回避できるかもしれませんが、アメリカにしてみれば、それだけでは攻撃しない理由にはならないわけです。なぜなら、米本土向けのICBMの開発は粛々と進んでいく。その「開発停止」なんて、仮に約束したところで、ほぼ検証不可能です。ロケット技術者がいる限り自動的に進んでいく。

そのICBMに搭載する核弾頭に関しても、すでに存在している可能性が高い。というのも、北朝鮮の場合、多弾頭(一発のミサイルに多数の核爆弾を搭載しているタイプ)ではなく、単弾頭式を採用しているので、小型化のハードルも低いわけです。

だから、金正恩と彼の体制が存続する限り、アメリカとしては、攻撃の「延期」はあっても「中止」はありえないと考えるべきです。

「アメリカが核保有国を攻撃した事例はない」と言う専門家もいますが、他の核保有国は北朝鮮のように対米「公式脅迫ビデオ」を制作したりしていません。

ブッシュJ政権時代、もともと「イラク→北朝鮮→イラン」と順番に叩く予定でした。仮にトランプ政権が実質「第二次ネオコン政権」なら、その意志を引き継ぐでしょう。ましてや本命の対イラン戦のためには、早く北朝鮮を始末する必要がある。

そして、このアメリカの方針がまた北朝鮮の自衛のための核・ミサイル開発の動機になっているわけで・・・もはや悪循環以外の何物でもありません。

戦争の動機・・・アメリカとイスラエルの安全保障のため

ところで、ローマ法王が朝鮮半島情勢に無知だからといって、私たちが本当に知っていると言えるでしょうか。実際、今回の「第二次朝鮮戦争」(ないし朝鮮“再戦争”)には、一般に想像されるよりもはるかに多くの利害が絡んでいます。

私が当サイトで頻繁に説明してきたのは、「アメリカとイスラエルの安全保障のため」という観点です。これほど北朝鮮情勢に関する情報があふれるようになっても、一般には依然としてイスラエルの話は出て来ないですね。不思議です。

アメリカについては、もはや「一般常識」化したので、触れません。

イスラエルもアメリカとほとんど同じ懸念を共有しています。北朝鮮はイラン・シリアとも繋がっている。互いに核・ミサイル関連の技術・部品・技術者をやり取りする関係です。反米国家・組織と反シオニズムのそれは、かなりの確率で一致します。だからアメリカ同様、イスラエルも、北朝鮮の核・ミサイル関連の技術・現物がそれらの国や組織に拡散することを恐れている。拡散したら、もはやリスクがコントロールできなくなります。

しかも、北のSLBMの発射実験成功で、躊躇している余裕はなくなった。反イスラエル勢力に渡ったらホロコーストの再来になりかねないわけで、これはイスラエルが一番嫌っている兵器でもある。

そして、アメリカ・イスラエルとも、次は対イラン戦をしたい。むしろこっちのほうが本命。そのためにも、北朝鮮を早く始末してしまう必要があります。

トランプ政権と軍産複合体の利害の一致

さて、対北朝鮮戦争は、国家の安全保障だけでなく、産業利益又はそれを通した国全体の利益とも絡んできます。とくに軍需産業が巨大なアメリカは。

アメリカは2003年の対イラク戦争以来、大きな戦争をやっていない。しかも、オバマ時代は軍縮路線のため、軍産複合体はずっと冷や飯を食わされてきた。

今年の3月半ば、トランプ政権は、2018年度(17年10月~18年9月)の国防費基本予算を議会に提出しました。それに拠ると、前年度比10%軍拡の、5740億ドル(約65兆円)です。米軍需産業の最大の食い扶持はこの内需です。

しかし、これで景気に即効性があるわけではないんですね。周知の通り、トランプ政権は国内の製造業を復興し、白人の中間層を潤したいと考えている。手っ取り早い景気回復の方法が「戦争」です。なぜなら、戦争を始めると、臨時予算を組む形になります。それはたいていそのまま議会を通ります。

しかも、理想的なのは、91年の湾岸戦争のように戦費を外部から調達すること。この時、日本は1兆円くらい毟り取られましたが、アメリカはそうやって戦費の9割を同盟国から調達した。それで盛大に空爆をやって、弾薬を大量消費したんですね。

おそらく、トランプ政権はそれを再現したいのだと思う。大雑把に言うと、いま北朝鮮と戦争を始めれば、5~10兆円くらいは米軍需産業に落ちるはず。

嫌な話ですが、「戦争は巨大なビジネスである」というのが現実です。

しかも、一番頭のいいやり方は、実戦の前に、できるだけ危機を高めて、紛争関係国に兵器および兵器システムを売り込むこと。今、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)が最大の「目玉商品」になっていることはご存知の通りです。

そうやって武器セールスが一通りまとまったところで、次は盛大に戦争をやる。軍産複合体的にいえば、武器弾薬の大量消費であり、在庫の一掃です。

どうやら、10年から15年に一回はこれをやらないと、アメリカの軍需産業が維持できないらしい。前回のイラク戦争が2003年でしたから、そろそろ限界です。

むろん、戦争の舞台となった地域は破壊されます。ソウルが北朝鮮の自走砲・ロケット砲の大量報復を受けるかもしれない。在日米軍基地がミサイル攻撃を受けるかもしれない。日本人・韓国人・米軍人が大勢死ぬかもしれない・・・しかし、それはそれで「復興需要」を生むわけです。とくに街とインフラの再建はゼネコンのビッグビジネス。

他方、軍隊的にも、純粋な「軍事的ニーズ」というものがあります。

たとえば、様々な新兵器を実戦テストしたい。新開発した小型核兵器の詳しいデータが欲しい。弾道ミサイル防衛システムをテストしたい・・・いろいろあります。

だから「トランプ政権は危機を煽っているだけだ」という見方もありますが、そうじゃない、本当に“おいしいところ”は実戦とそれによる需要の喚起にあるわけです。

以上、「朝鮮半島有事へと向かう構造」を様々なアングルから見てきました。

俗に「戦争は一発の銃弾から偶発的に起きる」みたいな解説がありますが、本当はそう単純じゃなく、火花が火災になる背景なり構造が元々あるんですね。

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