加計学園 何が問題か 本質をズバリ解説【4・結論編前半】

オピニオン・提言系




この記事は、先行する関連記事を踏まえた上での結論部分なので、必要な予備知識として、まず以下に目を通していただけると助かります。

さて、上の記事を読んでいただけたでしょうか。

ならば、下へお進みください。



加計学園問題に対する私の結論

これまでの情報を総合した上で、大局的見地から最初に結論を述べたい。

はっきり言おう、これはたいした問題ではない。

先行記事ですでに述べたように、獣医学部新設の経緯とその周辺の人間関係という「状況証拠」から考えて、これは安倍総理の縁故政治の疑いがある。

安倍総理「そろそろ友人の孝ちゃんに花を持たせてやりたい」

側近たち「加計さんには世話になったから、恩を返しておきたい」

邪推かもしれないが、真相はこんなところではないか、と思っている。ある意味、両者の関係を考えれば、このような人情が働かないほうが不思議ともいえる。

むろん断っておくが、「認可に際して私情が働いた」というのは私の推測にすぎない。文科省が公開した内部文書にも、直接の証拠はない。だから、私は第一弾記事で「黒」と言い切ってしまったが、正確には「黒に近いグレー」だと思う。

だが、ポイントはむしろここからなのだ。

仮に、「本来、公益の観点からすると、加計学園の獣医学部新設は認められないが、でも友人だから特別に認めた」というなら、公益を毀損したことになる。

明らかな腐敗だ。安倍政権は即刻退陣しなければならない。

ところが、「もともと認めることが公益に繋がる案件であり、そのフレーム内において縁故政治を行った」というなら、社会に損害を与えたことにはならない。

やはり第一弾記事で「公益の観点から見ると判断が難しくなる」と言ったのは、そういう意味だ。もちろん「贈収賄がなかった」という「但し書き」が付く。

贈収賄はあったのか、なかったのか

これがあったら、公益に資する案件であろうが何だろうが、一発でアウト。

だから、重要なポイント。仮に、安倍総理側が便宜を図った見返りに政治献金等を得ていたなら贈収賄が成立するが、今のところ確認されていない。

ただ、金銭の授受はなくとも、学校法人側が総理周辺にポストなどの「利権」を提示してきた見返りとして、陳情に応えてもらったとしたら、実態としてはどうか。

しかし、安倍氏個人がほとんど得ていないという点が、このストーリーのネックになる。もちろん、安倍氏は数年間、加計学園の役員をしていた。ただ、それはかなり以前の話であり、しかも年間14万円程度だから、中高生の小遣い程度の話である。

安倍氏が名前だけで数千万円の役務報酬を貰っていたならともかく、この程度では仮に総理自らが加計学園の選考を決したとしても、収賄性はまったくない。一方で、“浪人時代”に「客員教授」にしてもらった側近たちには、加計理事長への「恩返し」の動機があってもおかしくはないし、事実、今回の件で“頑張って”しまったのかもしれない。

いずれにしても、側近たちが面倒を見てもらったことに“恩を感じた”というのはありそうだが、安倍総理個人が見返りの金銭を受け取った証拠はない。

四国に新設すること自体は公益に叶っていた

つまり、公益に資する範囲内で友人に便宜を図った(疑い――あくまで)、その際に贈収賄はなかった・・ということ。こういうのを「ただの職権濫用」という。

むろん、良くはない。しかし、告発サイドが、この件が「公益に反する」ことを具体的に証明しない限り、イエローカードでしかない。

むろん、そもそも公益上、問題なき案件だったのか、という疑問はあろう。しかし、これまでの情報を総合する限り、この件に関しては、議論は終わっている感がある。

なにしろ、文科省と獣医師会の圧力によって、50年以上にわたって獣医学部の新設が阻止されてきた。しかも、養成の体制は、東と西で「8:2」という“東高西低”だけでなく、なぜか四国にだけ学部がなかった。だからこそ、今治市と加計学園が15回も申請し、また四国4県の知事も連名で請願して支援してきた。

これは明らかに四国の獣医療関係者の悲願だったのだ。文科省は無常にもそれを撥ね続けてきた。しかも、その背景には、何やら腐臭を放つ文科省と獣医師会の既得権益があるらしい。それを死守せんがための“岩盤規制”を、安倍政権が「国家戦略特区」を利用した政治主導によって突破した・・。たとえ友人への利益誘導の意志が暗に含まれていたとしても、果たしてどちらがより公益に根ざしているだろうか。

これは、この問題全体の中で、「正VS不正」の要素かもしれない。

四国は長年、不公平感を募らせてきた。ある意味、「なんで沖縄ばかりに米軍基地が集中しているのか?」という同県民の不満と似ている。だから、四国に新設し、それを是正することは正しかったと、私は確信している。仮に選考に際して「四国か、京都か」問われれば、誰だって四国に軍配を上げるのでないだろうか。

取ってつけた屁理屈で自爆した前川元事務次官

ところで、この件で「少子化でニーズが減っていくから新設不要」と主張しているのが獣医師会。また、そこまで明言していないが、「獣医師がどれぐらい必要なのか検証したのか」と疑問を呈することで、暗に同様の主張をしているのが前川元事務次官。

だが、語るに落ちた、とはこのことだ。

四国の関係者は「今足りていない」と言って困っているのに、そのような論理で新設阻止を正当化できるなら、保育園も増やさなくていいではないか。

問題は今(そして当面)、地域によって足りず、公益が毀損されている状況だ。監督官庁が改善しないなら、誰がやるのだろうか(まあ、内閣府がやったわけだが)。専門人材の過不足に柔軟に対応することが「文部行政」ではないのだろうか。

それに、新設に際して「獣医師の需給について検証したのか」と問うのであれば、これまで新設を認めてこなかった方針に対しても同じ検証を求められるはずだ。

そうすると、文科省の公表した例の内部文書は、むしろ前川氏へのブーメランとなるのではないか。というのも、文書には文科省側の記したこんな記述があるのだ。

上の記述は、文科省の手元には獣医師の需給動向に関する資料がなかった、今回の新設検討段階になってようやく農水省にそれを問い合わせた、という事実を示唆している(しかも農水省も新産業でどれだけ獣医師のニーズが生じるかは未調査らしい)。

すると、それまでは需給にとりたてて関心を持っていなかったわけだ。ならば文科省は今までいったい何を根拠にして獣医師を増やすことを拒んできたのか、という疑問が沸いてくる。こうなると、獣医師会との政治的な関係を疑われても仕方がない。

つまり、業者と癒着していたのは前川氏ら文科官僚だった、ということになりはしないか。これは証人喚問して問い質したほうがいいのかもしれない。

だいたい“検証”も何も、四国側はずっと足りないと訴えてきた。文科省はその「現場の声」を15回も撥ねつけてきた。これが公益に奉仕する役所のやることか。

結局、前川氏はさも公益に基づいて政権の姿勢を糾しているようでいて、実際には自己保身のために詭弁を弄しているに過ぎない。

もちろん、既得権益者側の反論のための反論とはいえ、少子化で将来的にニーズが減少し、中長期的には獣医師が過剰化する懸念はある。だが、言ったように、それこそ監督官庁の出番ではないか。定員の調節で柔軟に対応していくなど、いくらでも知恵はあろう。だいたい、それを“行政”というのではないだろうか。

【4・結論編後半】へとつづく。

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By 山田高明 Takaaki Yamada

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