安易に「開戦はこの頃だ」と口にすることは慎むべきだろう。
ただ、一つの見方を提示したくなったので、この記事を記すことにした。
9月11日の制裁決議により、北朝鮮は輸出収入の9割を断たれる見込みになった。これは「兵糧攻め」だ。広義の戦争はこの日をもって始まったと私は考えている。
だから開戦とはあくまで「実戦」のこと。
今のところ中国は対北制裁の履行に協力的な様子だ。
トランプ大統領の国連総会での演説後、マクマスター補佐官から「大統領が重要な発表を行う」との表明があったが、それは「独自制裁」の強化だった。
事態は経済制裁から、ほとんど「経済封鎖」へと移行しつつある。
北朝鮮に寄った航空機や船舶は、一切アメリカに入れなくなった。今後は高麗航空も横田基地に降りることができなくなるかもしれない(*北朝鮮国営の高麗航空は世界中の空港に乗り入れているが、万景峰号と同じ様に乗務員が事実上の工作員のため、アメリカは民間空港ではなくわざわざ日本の軍事基地に降ろさせている)。
中国の五大銀行は自身が制裁対象になることを回避するため、進んで北朝鮮との関係を断った。彼らは北朝鮮の企業や組織はおろか、個人との取引も停止した。このため北朝鮮は中国の銀行を通したドル建て取引が一切できなくなった。
ただし、中国がアメリカから経済制裁を受けることを恐れても、すでに制裁対象になってきたロシアはあまり恐れていない。アメリカが北朝鮮を締め上げても、ロシアが国連決議の対象でない経済取引ならむしろ積極化する可能性がある。
しかし、国際社会とアメリカの一致した制裁の前には、それも焼け石に水。
かくして、北朝鮮は追い詰められていく一方となる。
核を廃絶しない限り、北朝鮮はそう遠くない将来に破綻する。
このように、広義の戦争は始まっているが、問題はいつ頃に「実戦」になるかということだ。金正恩政権がクーデター等で自壊しない限り、それは起きると思われる。
トランプ大統領は先の演説ですでに国際社会に対して大見得を切った。彼はこれまで、移民の規制、メキシコ国境の壁の建設、TPP離脱、パリ協定離脱、等々、過去の演説で公言したことはほとんど実行した。この辺はやはりビジネスマンの習性が身に付いている。実行する気のないことを公約する虚言癖は職業政治家特有のものだ。ビジネスマンの彼が北朝鮮への攻撃を世界に向かって口にした以上、「いつか」やるだろう。
政治日程から推測すると、もしや「ブラッディー・クリスマス」になる?
おそらく、安倍総理は個人的に一定の情報を知らされている。
それが先の国連総会での演説にも反映されている。また、解散の決断にも。
現段階で衆院の解散総選挙が10月10日公示であり、「22日投開票」である可能性が高い以上、攻撃がそれ以前ということはない。よほど「何か」無い限り。
私は、注目すべきは、10月の中国共産党大会であり、11月中に予定されているトランプの訪中ではないかと思う。
というのも、アメリカとしては、北朝鮮問題で中国の協力を引き出し、かつ対北で中ロの連携プレーを分断するには、中国の面子を立てることが重要になってくる。
中国共産党大会が10月18日に開催される。仮にこの前後に開戦してしまったら、習近平の面子を潰してしまうことになる。だから10月は可能性が低い。
また、トランプ大統領は11月に初来日する。11月4~6日で調整が進んでいる。訪中はその後になる。これは「有事」の前に直接、対応策を話し合う意味もあるに違いない。
そういうわけで、相手からアクションがない限り、この10月と11月は様子見ではないかと思われる。だいたい、本格制裁が9月11日に始まったばかりだから、しばらくは履行を徹底したり、監視を強化したり、効果を見定めなくてはならない。
よって、トランプ政権としても、最低限、9月11日から3ヶ月か、100日間は、様子見しなければならないはずだ。つまり、12月の半ばまでは様子見になる。
ただし、この様子見が無限に続くことはない。半年続くと、来年の3月11日になる。
9月初旬、金正恩は「ICBMを撃ってアメリカのクリスマスを台無しにしてやる」などと宣言して、今年のクリスマスには核弾頭装備のICBMを実戦配備しようと計画している。もともとアメリカにとっても、それが一つのレッドラインと思われる。
また、2018年1月20日には、大統領就任から一周年になる。
果たして、“めでたい”クリスマスや就任二年目まで、トランプが我慢するだろうか。その頃まで、北朝鮮問題を引きずりたいと考えるだろうか。
それとも「ハレの日」までには凶事を解決したいと願うだろうか。
おそらく、どちらがクリスマスを祝うかというのは、トランプと金正恩の双方にとって自分の面子のかかった問題かもしれない。意外とこういう要素は侮れない。
そう考えると、必然的に12月10日から20日の間くらいが怪しくなってくる。
もう一つ、どうやらトランプ大統領は近々、イラン核合意を破棄するらしい。
二正面作戦を避けたい米軍部としては、戦争において北朝鮮とイランを連携させないことが戦略の最重要事項だから、このことは対北開戦の重要なサインだ。
トランプがそれを発表してもいいということは、もはや二つの“ならず者国家”の連携を心配しなくてもいい――つまり「北朝鮮を片付ける日が近い」ということでもある。
世界は「血まみれのクリスマス」Bloody Christmasを見ることになるのだろうか。
以上、狭義の戦争、つまり実戦が具体的に「いつ」始まるか、ということを推測してみた。私たちが無事、正月を迎えることができるか否かは、今は神のみぞ知る。
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