やはりトランプの対中強硬外交の裏にいたキッシンジャー博士

外交・安全保障




みなさん、こんにちは。

トランプ政権が中国に対して凄まじい攻勢に出ています。

正直、ここまでやるか、というニュースが多くなった。

数次にわたる対中制裁により、最終的(?)に、米国に輸入される中国製品のほぼ半額に高関税をかける形になるとか。

また、南シナ海や台湾をめぐる安全保障分野においても両国は鋭く対立しています。

ただ、こういった対中強硬外交は、トランプ大統領個人の意志以上に「誰か」の振り付けなんですね。「誰か」が大きな戦略の下にトランプ外交を動かしている。

私は、天才戦略家のキッシンジャーだろうと推測してきました。たぶん彼が一番大きなところで「絵」を描いているのだろうと。

2016年5月、当時のトランプ大統領候補がシークレット・サービスを引き連れてキッシンジャー邸を訪ねました。しかも、アメリカの大手ニュースでライブ中継されたんですね。その後、中国を「悪の帝国」として叩くつもりではないかと、私は直感した。



米当局者いわく、逆“ニクソン・チャイナ芝居”

実は、最近、ロシアのプロパガンダ紙である「スプートニク」紙に、私が喝破した内容そのまんまのことが書かれていて、びっくりした。

7月の終わり頃の記事ですが、私の解説を交えつつ、少し内容を説明します。

Trump Advised by Kissinger to Cozy Up With Russia to Contain China

(トランプはキッシンジャーから「中国を封じ込めるためにロシアに擦り寄れ」とアドバイスを受けていた。)

キッシンジャーといえば、1970年代のニクソン政権時代の国務長官でした。

彼は当時、中ソ同盟(Sino-Soviet alliance)を打ち破るために三角外交(triangular diplomacy)というコンセプトを思いついて実践した。アメリカは、毛沢東・周恩来の中国と関係を劇的に改善して、ソ連を孤立に追い込むべきだとする発想です。

これは共産圏を大きく分断する戦略でした。私(山田)の考えでは、当時の田中政権の日中国交回復も、この戦略の下位に位置づけられるものだった。ただ彼はレールから逸脱してしまったために、ロッキード事件で政治的に暗殺されてしまいました。

それはともかく、5人の情報源によると、2016年後半から2017年初めにかけての大統領への移行期に、キッシンジャーはまたこの三角外交を行うようトランプにアドバイスしたということです。ただし、今度は中国を孤立させる(try to isolate China)方向性です。しかも、彼は上級顧問のジャレッド・クシュナーにも同じアドバイスをした。さらに国務省・ペンタゴン・国家安全保障理事会も類似の戦略を提案したという(*どうやら偶然ではなく、最初からキッシンジャーと繋がりがあったようだ)。

元トランプ政権当局者はこれを「reverse “Nixon-China play”」(逆“ニクソン・チャイナ芝居”)と呼んでいた。キッシンジャーは、トランプが古い時代を終わらせるために歴史上に現れる人物たちの一人ではないか、とまで評価していた。

しかし、スプートニク紙はあくまでロシアの立場にたつものです。

中国と対峙させる方向へとロシアをターニングさせるというキッシンジャー・ビジョンの有効性は、疑問の余地があると、否定的に述べています。

対ユーラシア「オフショア・バランシング」政策の「リターン&リバース版」

たぶん、ロシアとしては、「おれたちはちゃんとアメリカの意図を見抜いているぞ」というメッセージでもあるのでしょう。こういうのは見抜かれたら終わりです。

それはともかく、トランプ政権が発足した直後ですが、私もこう記していました。

トランプ政権の対中ロ外交はキッシンジャー戦略の修正再起用だ
さて、トランプ新政権を指して私は勝手に「ネオ・ネオコン政権」とあだ名しました。トランプでもヒラリーでも大きな違いはないというのが私の考えです。 両者の極端な対ロシア姿勢の違いについては、主として「影の政府」内の路線対立が反映されたものであり...

で、ようやく見えてきたのがトランプ当選後、昨年の12月になってからです。

まず、トランプは台湾の蔡英文総統と電話会談し、いきなり「一つの中国」という前提をひっくり返しました。この原則は1970年代の米中・日中の国交正常化と台湾断交から続いているものです。立役者はキッシンジャーでした。

そして、同月、トランプ氏は、わざわざホワイトハウス内に「国家通商会議」を新設し、超対中強硬派のピーター・ナヴァロ教授を登用しました。

しかも、トランプがナヴァロ教授の本を読んでわざわざ政権入りを口説いたという点に興味をそそられました。というのも、トランプがそんな本を自主的に読むことはありえない。周辺の「誰」かが読ませたに決まっている。

さて、この時点で、三つのヒントが出揃いました。

  • キッシンジャー
  • 対ロ宥和姿勢
  • 対中強硬姿勢

これでようやく私にも見えてきました。というか、分ってみれば「なんだ、そういうことか」という程度の話でした。

要するに、70年~80年代にかけて行われた、キッシンジャーの対ユーラシア「オフショア・バランシング」政策の「リターン&リバース版」だと思われます。

ポイントは、単に過去の成功手法を蒸し返すだけでなく、標的を入れ替える、つまり「リバースする」という点にあります。かつてのソ連が、今度は中国になるわけです。

(略)仮に私の推理が正しいとしたら、今後、中国は「悪の帝国」視され、かつてのソ連と同じ運命を辿ることになるでしょう。

と、こう記したのが2017年の1月。

言葉遣いは少し違っても、米当局者のいう「reverse “Nixon-China play”」(逆“ニクソン・チャイナ芝居”)と意味はほとんど同じです。

キッシンジャーの新戦略が最後までうまく行くとは限らない

やはり、背景にあるのは、中国の勃興に対する米の焦りなんですね。

発足時のトランプ政権のメンバーであり、政権の理論的支柱だったのがスティーブ・バノン元首席戦略官です。彼はまた対中強硬派としても知られていました。

昨年、バノンは政権の不満を外部に言って、解任されてしまいました。

私も記事にしましたが、彼はオフレコでこんなことを言っていた。

http://freezzaa.com/archives/2232

バノン氏によると、トランプ政権の本命は中国であり、又中国との経済戦争である。政権内には、あと25から30年の間に中国が覇権を握るかもしれないという意見すらある。対して、北朝鮮の件は余興にすぎない。

要は中国の覇権を阻止したいわけですね。そのための戦略として、おそらく中国を追い込んでバラバラに分裂させるつもりなのでしょう。

ただし、「真の絵」は「逆“ニクソン・チャイナ芝居”」以上のものだと想像します。

これも、すでに述べていますが、中ロを分断して各個撃破する戦略です。

つまり、旧ソ連のように共産中国をバラバラに解体した後は、全力でプーチン・ロシアの打倒を目指すということです。あくまでロシアも打倒対象なんですね。

日本の知識人で、この単純なことを理解している人がどこまでいるか・・。

ただし、その役割はトランプではなく、次の大統領が担うでしょうが。

私には戦略家の才能は皆無ですが、その代わり、ある種の直観力がある(気がする・笑)。たまにピンと来るんですね・・・ま、たいていはハズレですけど。

このキッシンジャーという爺さんは、個人の資格で「300人委員会」の一席を持っている「ワイズマン」です。たいていは、ある王侯貴族の一族や、大企業グループに、代表として「一席」が与えられる。キッシンジャーはそれを個人で持っている。

他方で、キッシンジャーはオッペンハイマー出自のユダヤ人として、ユダヤ地下政府「サンヘドリン」の一席も持っているはず。彼を単なるロックフェラーの使い走りであるかのように評する人がいますが、私は過小評価だと思います。

だから、世界支配層の思惑が透けて見える彼の戦略を注視しなければならない。

ただ、プーチンはとっくに見抜いていて、最後に戦争に打って出る可能性があると、私は以前から何度も言っていますが・・。

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