ボルトン補佐官解任劇の裏を読む

外交・安全保障




みなさん、こんにちは。

大変、興味深いニュースが入ってきた。

トランプ大統領がボルトン安保補佐官を解任したのだ。

しかも、トランプはわざわざ記者団に対して、「大きな過ちを幾つか犯した」と、ボルトン批判を公言した。トランプがその一つとして挙げたのが、北朝鮮の核放棄に関して、彼が「リビア方式」を提唱したため、北朝鮮側との融和ムードが遅滞したことだ。

トランプの発言や報道を見る限り、両者はほとんど「ケンカ別れ」である。

ボルトンがずっとトランプに逆らい続け、

トランプが「この野郎!」という感じで首を切った、みたいな。

政権の些細な動向までもが大きく報じられることはホワイトハウスも承知。

今回の件でのトランプのボルトン批判は、政権にとってマイナスでしかない。



これはトランプから金正恩への政治的プレゼントだ

さて、私の知る限り、まだ誰も主張していないと思うが、

「これは情報操作だ!」と直感したのは私だけだろうか?

トランプは記者団に対して、リビアが核放棄を飲んだ後にカダフィが破滅した例をわざわざ引き合いに出して、北朝鮮が反発するのも当然という認識を示した。

そして、その後の北朝鮮の反発について、金正恩委員長側を責めないとして、あくまで身内のボルトンを責めて、自分たちの側に責任があるという考えを示唆した。

一聞しておかしいのは、第二回米朝首脳会談の席で、ボルトン補佐官がリビア方式を主張したのは、トランプも承知の上のはずだったということである。

なにしろ、ボルトンは会談の前から、北朝鮮の核放棄の方法について、あれこれ厳しい意見を公表していた。その彼を会談の席に同席させたのもトランプの判断である。

しかも、ボルトンを解任した日が9月10日で、上の発表が11日

そう、北朝鮮の輸出収入の9割を断った「9・11」制裁からちょうど2年

周知の通り、北朝鮮は、米朝会談後の和解の流れ後も、同国に厳しい姿勢を崩さないボルトンだけはずっと名指し批判してきた。

その対北強硬派のボルトンが米政権から排除された・・・。

一番喜んでいるのは、北朝鮮だという点で衆目は一致している。

それどころか、トランプの発言や、発表の期日からして、金正恩は「これは自分に対する政治的なメッセージだ」とか「プレゼントだ」というふうに受け取るに違いない。

そして「アメリカの関係改善の意欲は本物ではないか」と信じ始めるだろう。

ボルトン排除で金正恩はようやくトランプを本気で信用する

実は、「やはりか!」というのが、今回のニュースに接した時の私の率直な感想である。

というのも、私は、アメリカ(又はその奥の院)が開戦方法を、

「積極挑発法」から「第二アチソンライン法」へと変えた、

という仮説を唱えているからである。

アチソンラインについては説明するまでもないが、

要は「アメリカはもう韓国なんか守らない」という意志表示だった。少なくとも当時の北朝鮮はそう信じた。そして、南侵に打って出たため、朝鮮戦争が勃発した。

仮にアメリカ(の奥の院)が「第二アチソンライン法」へと転換したとすれば、米政権内に「対北強硬派」がいると、チグハグなことになってしまう。

金正恩の視点に立てば、誰にでも分かる。

仮にアメリカが在韓米軍を撤退させたとしても、米政権内にボルトンのような「対北強硬派」が在籍したままだと、安易に韓国併合に動けないだろう。

つまり、ボルトンの存在そのものが、「我が国の南侵を誘発して米軍が成敗するためのトラップではないか」との疑念を金正恩に抱かせるのだ。

だが、トランプがそのボルトンの首を切り、記者相手に髭ジイを吊るし上げ批判までして、オマケに上のような親北トークをすれば、金正恩は次のように確信するはずだ。

「トランプの僕に対する友情は本物なのだ!」と。

「これはアメリカが本気で我が国と友好関係を結びたい意志の顕れなのだ!」と。

どんだけワルなんだよ(笑)。

こんなふうに、笑顔で相手と握手して、信用させて、背中から刺すつもりなのだ。

そういう意味で、今回のトランプの「ボルトン吊るし上げ記者会見」は、白々しい「情報操作」だと私は言っている。この後、ボルトンのほうも、トランプのことをけなして、メディアがそれをまた取り上げるという三文芝居が行われるに違いない。

かくして、世間と北朝鮮指導部は、ますます両者の喧嘩別れが本物だと確信するわけだ。

着々と仕込みが進む第二アチソンライン法

以前にも述べたが、この「第二アチソンライン法」だと、

アメリカは北朝鮮と仲良くする一方、韓国には冷酷に振舞わねばならない。

また、日本もアメリカに歩調を合わせ、韓国との協力関係を断たねばならない。

韓国がGSOMIA破棄を発表したのが8月22日。

私は文在寅政権が発足する前から彼がそうすると書いてきたが、破棄の3週間前にも改めて次のように記しておいた。

「やはりアメリカは「韓国切捨て」を決めていた! 2019/8/1」

(前略)安倍政権による「ホワイトリスト」(輸出優遇国)除外という対韓政策も、アメリカによる韓国切捨ての流れと連動しているのだろう。

つまり、

日本が「ホワイト国」から韓国を除外 → 韓国がGSOMIA破棄

アメリカが韓国に次期「米韓防衛費分担金50億ドル」要求 → 米韓同盟破棄

である。

上は早ければ今8月の半ば。下の同盟解消は来年4月か。

この予測通りに、韓国はホワイト国除外を理由としてGSOMIAを破棄したわけだが、このことをはっきり明言していた人は非常に少なかったように思う。

国連軍司令部は12年も前にソウルから横田に移転している。

昨年には在韓米軍司令部がソウルからその南方へと移転した。

ま、上の二つは単に戦争に備えた動きだろう。在韓米軍の撤退を示唆するのは以下だ。

今年2019年、米韓合同軍事演習が終了した。

そして日韓関係の急激な悪化と、韓国のGSOMIA破棄と続いている。

安倍政権は「アメリカのお墨付き」があるから「断韓」に動いているに過ぎない。

もともと「親韓」を始めた一人が安倍さんの祖父の岸信介だ。

もちろん、関係改善を指示したのはアメリカである。

私が欧米支配層および日本の属国状態に非常にむかついていることの一つは、連中が日本のパワーを抑えるために、産業構造を模したライバルを作ったことだ。

実はそれが韓国だったのである。

しかも、連中の巧妙な点は、日本の金と支援を使って、日本のライバルを育てさせたことだ。日韓国交正常化に動いた岸信介もその協力者だし、一番酷いのが中曽根だった。

欧米支配層はさぞかし日本を愚弄しながら腹を抱えていただろう。

で、朴クネの時代には、まだアメリカは「積極挑発法」だったから、その系譜に連なる安倍政権は、「日韓は仲良くしろ」と、無理やり「慰安婦合意」を飲まされた。

そして、アメリカ(又はその奥の院)は「第二アチソンライン法」へと方針を変えた。

だから、安倍政権は、今度は「韓国と縁が切れてもいい」とやっている。

さて、今後のことをいえば、アメリカは米韓防衛分担金交渉で、5倍ではないかもしれないが、いずれにせよ吹っかけて、韓国側から同盟を破棄するよう仕向けるだろう。

その後に在韓米軍撤退。北朝鮮歓喜。

アメリカは北朝鮮に対する経済制裁を緩和又は解除するだろう。

そして、「米朝平和条約」や「米朝不可侵条約」を結ぶことすらありえる。

おそらく、米朝不可侵条約が締結されたら、国内の反安倍派が左右の違いを超えて結集する。北朝鮮の拉致を手伝っていたような連中が「拉致された方々を見捨てるのか?」などと政権責任を追及する。安倍さんが総理を辞任する事態も考えられる。

さらにアメリカは、北朝鮮に特使すら派遣して「貴国が韓国の併合に動いても、わが国は一切介入しません」と、口約束することすら、やってのけるだろう。

平行して、どんどん中国を追い込む。

計画者たちは、来る第二次朝鮮戦争を、米中戦争と連動させるつもりだからである。

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