アセアン+日中印の「4頭体制」と「独自通貨」の創設構想

オピニオン・提言系
これからはアセアンの時代




ドルが基軸通貨であるがゆえにアメリカが覇権国なのか。

アメリカが覇権国であるがゆえにドルが基軸通貨なのか。

どちらが正しいのか分かりませんが、両者が密接に関係していることはご存知の通り。たぶん、ドルの覇権が終わればアメリカの双子の赤字が急速に実体化するでしょう。

すなわち、貿易赤字と財政赤字です。ドルさえ差し出せば魔法のように外国製品が手に入る時代は終わる・・つまり、貿易に関していえば、アメリカ人もまたモノやサービスを売って「外貨」を稼がねばならないということです。また、今までのように市場も米国債を安定資産とは見なしません。黙っていても日中とアラブ諸国が米国債を買ってくれる時代も終わりを告げるのです。連邦政府の歳入不足は公共投資の縮小と軍事費の削減に直結しますから、アメリカの経済力・軍事力も縮小を余儀なくされるでしょう。

結局、世の中にフリーランチはないのです。



原油市場におけるドルと人民元の主役交代

最近、あまり注目されなかった地味なニュースがありました。

それは上海先物取引所で原油先物が取引できるようになったということです。

つまり、人民元で原油が購入できるわけです。

これは国際市場の構造変化が関わっています。

実は、世界支配層から何度も暗殺されかかったフランス民族派のド・ゴールが最後に行った“レジスタンス”がドル基軸制への挑戦でした。

それが最終的に突然のニクソンショック――金とドルの交換停止――へと繋がります。

以来、世界経済は不換紙幣と変動相場制を基盤としています。フリードマン氏はこれを「人類が未経験であり、どこに行き着くか分からない」と称しています。

ただ、「ワシントン・リヤド協定」により、ドルでしか原油を買えないようにしたことで、ドルの価値は石油を基軸エネルギーとする現代文明において保たれてきました。

ドル以外でも石油を購入できる道を切り開こうとしたサダム・フセインやカダフィは叩き潰されました。しかしながら市場の構造変化自体は止めようがありませんでした。

2005年、ネオコンの中東占領策が失敗した当時のブッシュ政権はエネルギー政策を大転換し、穀物由来のエタノール生産拡大と省エネ車の普及へと舵を切りました。

また、足元のシェール層から石油を取る技術革新も起こり、アメリカは世界最大の原油産出国へと変貌しました。当然、自給拡大に伴い、中東原油離れが進みました。

対して、同じ時期、中国では自動車需要が急増しました。それにつれ、原油の国際市場における中国の存在感も年々増していきます。

2018年、中国の新車販売台数は世界一の約2800万台。アメリカは二位で2千万台を下回ります。世界の原油市場においても主役の交代が起こったわけです。

余談ですが、原油は製油所で精製され、内4割がガソリン・軽油などの自動車用燃料へと化けます。他は化学原料たるナフサ、重油、タールなどになります。

現在、中国は「内燃自動車と石油」から「電気自動車と原子力」へと舵を切りました。これは国策であり、後者の比は年々拡大されていきます。

ただ、それでもしばらくの間は中国が石油輸入の主役であり続けるでしょう。

このように、石油輸入国として米中の交代が起きたわけですから、代金面においてもドルと人民元の交代が進むことは、実態に即した当然の流れと考えられるわけです。

米・中・EU・日本・・・どこもダメ

かくしてドルの重要な裏づけが消えつつあります。

もう一つは「アメリカ・ファースト」なるトランプ政権の半孤立主義的な政策がリーダーとしての信用を失墜させています。自分の国さえ良ければ国際社会がどうなろうと知ったことではない・・という内向きの政策は自身のヘゲモニーを脅かします。

しかしながら、では人民元がドルに完全に取って代わるかというと、その可能性も低いわけです。なぜなら、通貨は発行国の総合的実力を信用の背景とするからです。

現在、中国経済の図体の割には、人民元は国際決済通貨としては普及していません。やはり、共産党の一党独裁体制で、知的財産を盗みまくって、人々の人権を無視しているような国は、まともな国とは見なされていないわけです。

その上、つい昨年、中国製品はアメリカから過去最大の関税を掛けられました。中国の金融機関や国有企業の膨大な借金の存在や失業者の急増も注目されています。

結論から言うと、人民元が世界の基軸通貨になることはありえない。習近平は「これからの世界は中国が主導する」などと演説しましたが、そんな馬鹿な話があるかと、私は一笑に付しました。私はあと数年で共産中国の体制は崩壊すると明言しています(*中国そのものが崩壊すると言ったことは一度もありません)。

米中だけではありません。EUも空中分解しかねないザマです。

では日本でしょうか? 少子高齢化と膨大な借金、ヒタヒタと迫る巨大地震・・

私はどうも「世界的なカオス」が近いのではないかと思います。

私は前々から、第二次大戦後に出来上がった世界システムは2017年を持って終わりであり、18年から変革期に入ったと主張しています。

冷戦終結時に共産圏が崩壊して資本主義に合流するなどの変化があったので、現在の世界秩序は正しくは「修正バージョン」でしょうが、いずれにしても今世界の主要国が抱えている巨大な内部矛盾と不安定さは、その機能不全が真因でありましょう。

「中華民国」こそが中国の正統なる後継者であるという発想

このような先行き不透明な時代にあって、日本と日本人は、「これからもずっとドルによる国際決済が続くさ」とか、「これからも中国は共産党が支配する国だよ」といった考えで大丈夫なのでしょうか。いや、これは考えというより「思考停止」でしょう。

最近、西側メディアがウイグルの人権問題をクローズアップし始めました。媚中のNHKまでが大きく取り上げています。私的にはどんどん取り上げて中国のやり方を非難してほしいが、他方で、今頃急に言い始めたのも怪しい気がしないでもない。

どうも欧米支配層が、近未来の「中国共産党体制の崩壊」を見据えて、その後の金融支配といった「再植民地化」を狙っているのではないかと、私は推測しました(下)。

欧米支配層の狙いは「共産中国解体→再植民地化」か?
昨年、トランプ政権は中国に対して2500億ドル規模の関税をかけ、10月にはペンス副大統領が「対中宣戦布告」とも取れる激烈な中国批判演説を行った。 要は、中国は、知的財産の窃盗やスパイや為替操作やら、ありとあらゆる汚い手を使って、政治的にも経...

清朝崩壊後に唯一、まともに国政選挙が行われて、第一党となったのが国民党です。

そして、その国民党が建国したのが「中華民国→台湾」です。

トランプ政権になってから突然、アメリカは台湾のバックについた。細かい点は別の記事で触れるが、「台湾旅行法」など、中国の逆鱗に触れることを意図的にやっている。

台湾では国民党から民主進歩党へと政権交代が起きましたが、それはむしろ「国政選挙建国神話」を持つ中華民国の「成熟性・正統性」を益々証明するものであります。蔡英文という初の女性総統が生まれたことで、日本が遅れを取った感すらあります。

「中華民国→台湾」こそが、清朝崩壊後の正統なる中国の後継者である・・もしかすると欧米支配層はそういう大義名分を掲げて共産党独裁体制を打倒しに掛かったのかもしれません。又は打倒後に掲げるつもりのフラッグ(旗)かもしれません。

私も台湾独立は是非とも応援したいが、ただ彼らが中台対立を利用することに対してどうも胡散臭く感じます。理由はまさに先日の記事で述べたように、国民党による中国統一を影から支援して中国経済を内側から乗っ取ろうとした過去があったからです。

日本は「ポストドル」「ポスト共産党」を見据えて主体的に動くべし

やや穿ちすぎかもしれませんが、最近の動きを見ていて、明らかにポスト共産党独裁を見据えている欧米支配層は、やはり世界的視野を持っているなと感心します。

対して、日本政府は中国の現状を無条件に前提とし、常に受身の姿勢でいる。本来なら野党こそが柔軟な対中戦略を考えなければならないのに、安倍政権よりも視野が狭いばかりか、鳩山由紀夫や小沢一郎のように共産党独裁とベタベタしている無能ばかり。

だが、本来、欧米内部や戦後秩序そのものが動揺し始めている今こそ、世界をよりフェアに再編する絶好のチャンスのはず。また、それがポスト共産党時代における中国市場の争奪戦において優位に立つ道でもある。最近の次世代EV充電器の日中の規格統一は成果ではありますが、しょせんは従来のフレーム内でのヒットでしかない。

私は今こそ「ドル覇権」と「中国共産党独裁」が終わることを見据えて、中国・インド・アセアンを引き入れ、日本が主導して独自の「アジア経済圏決済通貨」を創設するべきだと思います。史上空前の「40億人市場」の共通通貨というわけです。

これは自国通貨とは別にドルの代替決済通貨を創るという意味であり、域内の通貨統合をしようという構想ではありません。日本は依然として円の国であり続けるわけです。

現状のドル基軸通貨体制は、アメリカにばかり有利であって、決してフェアなシステムではありません。世界の誰もがそう不満に思っていても、代替に足る国際通貨がない。

しかし、これならば「アジア通貨」の役割を超えて「ディファクト・スタンダード(事実上の国際決済通貨)」として機能するだけのポテンシャルがあります。

これはまた中国の野望を阻止する裏目的もあります。この四者チームの中では、中国の存在感は常に3割程度に留まるはずです。いったんチームに入って新決済通貨の受益者になれば、中国としてもチームを抜けられないし、勝手な振る舞いはできないのです。しかも、残る三者の連携を通して漸進的に民主化させる。一時的に共産党体制が崩壊しても、ポストだけは残しておいて、自由な中国になったらまた復帰してもらえばいい。

この四者は地理的に隣接しているだけでなく、インドから東の「インド精神文化圏」に属するという共通点もあります。精神文明において類似があるのは重要です。

今、タイ・ベトナム・インドネシアは大変な勢いで発展しており、アセアンは十分に「一頭」に値する存在です。むしろ、「四頭体制」は「アセアン+3」と呼んでもいいくらい。だから、この四頭通貨体制の本部は、東南アジアのどこかの国に置くのがいいでしょう。日本・中国・インドを中心にしないことが重要です。

むしろ、今から十年後だと、同様の動きが起きても、日本は「一頭に数えるには足りない」として、3頭の衛星的存在に位置づけられる可能性すらあります。

だから、それほどインバランスさを感じさせない今のうちに、日本は自ら「4頭体制」を提唱して「一頭」の政治的地位を確保しておくべきだと思います。

仮に安倍総理が提唱したら、世界に衝撃が走ると同時に、ついに国際社会のリーダーになったと見なされるかもしれません。期待していませんが、野党がこういう政策を出せば、世間から一目置かれ、「政権を任せられるかもしれない」と感心されるでしょう。

こうして、アジア経済圏のための独自の共通通貨を作って、公正なシステムにして、自分たちの市場と経済を自分たちで管理するようになれば、ドルは必要ありません。

つまり、ドル基軸通貨体制にトドメを刺すでしょう。また、アメリカの覇権も終わるでしょう。しかし、アメリカが自分ファーストをやっている以上、誰が非ドル経済圏を作ろうが、そんなことは勝手なわけです。しかも、フェアなシステムを作る提案は、アメリカ以外のほとんどすべての国の支持を得られるものです。

アメリカはもはや自国さえボロボロです。今の世界の嘆かわしい状況を見れば、アメリカにも、国連にも、世界を率いる資格がないことは一目瞭然です。アメリカ又欧米には依然として学ぶ点は多いし、謙虚でなくてはなりませんが、他方で「地球経営」をする能力も資格もないことを証明してきたのも事実で、総合的にいえばもはや「手本」と呼べる存在ではありません。西洋が掲げてきた「理念」そのものに何らかの欠陥があるのかもしれません。

仮に日本・中国・インド・アセアンの四者が協力して新たな基軸通貨を作り上げれば、世界の覇権・主導権のほうもまた自ずと移行してくると思います。

(*野党の皆さんへ。こういう構想はどんどんパクってくれて結構なんですよ。もうくだらない政権の揚げ足とりやコップの中の争いはやめてほしい。政治家ならビジョンを持って、日本とアジアと、そして世界を動かす構想を持ってほしい!)

 

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