さて、4月27日、南北首脳会談が板門店で開催され、境界線を挟んだ両首脳による和やかな出会いと一部会談の様子などが大きく報じされています。
日本のマスメディアは相変わらず真贋を判定するリテラシーがなく、金正恩がすでに大勢の側近を処刑してきた独裁者であるという事実を都合よく忘れている。
ちょうど、ヒトラーとチェンバレンの会談もこんな雰囲気だったのかもしれない。
友好的な雰囲気に飲まれて、やたらと「緊張緩和だ、対話だ、平和ムーだ」と喜んでいるものたちがいますか、彼らは本当に物事の表面しか見ていない。
北朝鮮が追い込まれてこんな茶番劇を演じているだけという本質が分かっていない。
「日本だけが蚊帳の外」というのも論外。そう言う者は何も分かっていない。
韓国人・在日コリアンの中には「念願の民族宥和だ」というふうに感動している人も多い。あまり感動に水を差したくはないのですが、残虐な独裁者が消えて、人道的な体制に転換しない限り、真の平和も宥和もないということを再認識したほうがいいでしょう。
兵糧攻めによって得られた近代史的に見ても稀有な戦略の勝利
北朝鮮からすれば、やらざるをえないから、やっているだけです。
以前に私はこう述べていました。
(前略)昨年、日米が主導して、国連安保理で、北朝鮮の輸出収入の9割を断つ「9・11制裁決議」などを採択した。日米はその他にも独自に制裁を行い続けた。
こうした“最大限の圧力”をかけ続けた結果、どうなったか。
(略)北朝鮮のほうから「非核化してもよい」と言い始めた。金正恩のほうから米朝首脳会談を提唱し、対話のテーブルにつくと言い始めた。
まさに安倍総理の思惑通りである。(略)
それは偶然得られた幸運ではなく、明らかに日米の外交努力の成果である。
どうやら、私のこの意見とほとんど同じことを、総理自身も発言したようです。
4月17日、訪米した安倍総理はトランプ大統領との日米首脳会談を行いました。
その会談の席で、総理は「北朝鮮が話し合いを求めてきたのは、日米が国際社会をリードして圧力を最大限に高めた結果だ」と発言したそうです。
自画自賛っぽいですが、実際には、事実この通りではないでしょうか。
日米は北朝鮮が非核化するまで最大限の圧力を維持する方針を堅持しました。
その結果、金正恩にしてみれば、非核化をしなければ「輸出収入9割減」の経済制裁が永遠に続くことになってしまった。しかも、私たちの個人生活と同じように、国民生活も維持するだけで一定のコストがかかりますから、日に日に蓄えを食い潰していく形になる。いわゆる「ジリ貧」というやつです。時間が刻々と体制を締め上げていくので、やせ我慢や強がりにも限界がある。最終的には自壊に追い込まれるわけです。
この状態を指して私は「北朝鮮は将棋でいえば「詰んだ」状態へと追い込まれている」と表現してきました。追い込まれた北朝鮮が首脳会談に応じたわけです。
私たちが今見ている板門店の歴史的な南北首脳会談は、その結果ということを忘れてはなりません。要するに、対話(のフリを)せざるを得ないだけの話です。
換言すれば、これは日米側の戦略的勝利といえます。
今回の国際的な対北経済包囲網を作る際には、日本も積極的に動きました。これには安倍総理個人の思惑がかなり発揮されている。
こんなふうに、外国と対峙して戦略面で競り勝ったという例は、日本の近代史においても少ないと思います。
やれ対話の流れだ、日本だけ蚊帳の外だ、早く日本もキム委員長と会談しろ、日本は孤立している、置いていかれる・・・。
左派・リベラル筋は今、こんなことを主張していますが、まったくナンセンス。
北朝鮮が詰んだ状態であることには変わりない。日本の戦略的優位は覆らない。だから、こちらは慌てて相手に合わせたり譲歩したりする必要は何もないわけです。
非核化の見返りとして、国交正常化して経済支援するという話も出ています。しかし、日本側は、北朝鮮が拉致被害者を全員返還し、なおかつ謝罪するまでは一銭の見返りも与えないというふうに、ブレないことが肝心だと思います。
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